中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年07月11日
この話をパパにしたら、テレビで堂々と自国産の自動車の悪口をいう事なんて日本では考えられないと言っていました。
■ロシア製よりも「輸入品」
うちの会社での話です。事務所スタッフで車の買い換えを考えている人がいるので、最近車の話題がよく出ます。「いくら外車でも、最終的な組立がロシアで行われているから~車は買わない」「ロシアで組み立てられているのに、値段は海外で作られる~車よりも高い。こんな車、誰が買うの?」などのセリフが飛び交う。こうしてロシア国内で生産をしている外資系自動車メーカーも、生産を始めてまだ間もないということもあり、ロシア人の間でまだまだ信用を獲得していないようです。
車だけではない。愛用している靴について「これドイツ製だよ。このメーカーは最近ロシアでも生産を始めたみたいなんだけど、そっちは絶対買わない」と私の弟はついこの前言っていました。どうもロシア人たちは、自分たちの手で高品質の製品が作れるとは信じていないようです。
「輸入品」を意味しているロシア語импортныйは「高品質」というニュアンスがあります。一時期よく放送されていた掃除機のCMも「ドイツ製なんだ」ということを強くアピールしていました。中国製はだめだけど、それ以外の国で作ったものはロシア製よりも信用されているようです。
■食品に関しては地の物を信頼
幸い、食べ物は違います。食べ物に関してはロシア人は案外日本人並に「国産」へのこだわりが強いようです。果物など、どうしても海外に頼らざるを得ないものもありますけれども、選べるならば皆さんはロシア製・ロシア産のものを選んでいるようです。製品がロシアの国家基準に合格したことを意味しているГОСТのマークが付いていればなおさら安心です。
しかも、皆さんは単純に「ロシア製」ではなく、ローカルな、つまり自分たちが住んでいる地域で作ったものを好んで選ぶようです。
その典型例は乳製品です(牛乳からアイスクリームまで)。キーラフの親戚は「キーラフの乳製品は一番だ」と言って、イルクーツクの実家のみんなは「いやいや、乳製品はイルクーツクだろ」と言っています。そして、ニジニ・ノヴゴロドの住民たちの間ではГородец(ゴロデッツ)というニジニのすぐ近くにある田舎町の乳製品は一番評判がいいようです。
ロシア人たちの大好きなソーセージなどの肉類などもその点まったく同じで、みなさんは自分の地域で作られたものを買いたがっているようです。
私はロシアに赴任して間もない頃、牛乳などのメーカーが多くてどれを選べばいいのか迷ってしまいました。そうしたら「とにかくニジニ・ノヴゴロドのメーカーを探しなさい。食べ物はローカルなものが一番おいしくて一番安心なんだよ」とアドバイスをされました。
ロシアは広いし道路もいまいちだから、物を運ぶには時間がかかります。従って、別の地域から運ばれてきた乳製品などは保存料が多い可能性もあるし、物流コストもかかっている分割高です。
キーラフのおばちゃんがうちに来るとき、自家製のジャムなどと一緒に毎回わざわざキーラフの乳製品を持ってきてくれます。「キーラフのケフィアは一番おいしいのよ!」とおばちゃんは自慢げ。「いや、イルクーツクの方がいいな」と弟は後でこっそり私に言っていたので、笑えてきた。
同じように工業製品も自慢できるものが増えるといいな~と思いますけど、道のりはまだまだ長そうです。
*当記事はブログ「ロシア駐在日記」の許可を得て転載したものです。