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2011年07月11日
■3通の公開書簡
Englundさんは今年4月から3回にわたり公開書簡を発表していた。1通目は4月8日、中国は民主と自由の国ではない。だから「中華人民共和国」から「中華共産党国」に改名した方がいいと主張する内容だった。2通目は6月18日に発表。公開書簡は胡錦濤国家主席にあてたもので、中国共産党は真実の歴史を隠ぺいしていると批判した。
問題となったのは、6月27日に発表した3通目の書簡とみられる。Englundさんは、脱税容疑をかけられ拘束されていた芸術家、人権活動家の艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏をみならって、言論と表現の自由獲得を目指すパフォーマンスをしようと呼びかけた。
その内容は、中国共産党建党90周年記念日にあたる7月1日午後6時に上海の観光地・外灘(バンド)に集合し、体に自由と書いて、体を硬直させ動かなくなるというもの。
■「史上最短の滞在ビザ」
中国当局はEnglundさんの呼びかけをきっちりチェックしていたようだ。上海市公安局は「社会管理妨害罪」でEnglundさんを呼び出し、パフォーマンス予定日の7月1日には復旦大学警備処に出頭するよう命じた。中国では、ネット検閲を回避して海外のウェブサービスで自由な発言をすることはある程度許されているが、デモや集会の呼びかけは御法度。ましてや共産党建党記念日のパフォーマンスとあれば、見逃すことはなかった。
かくしてパフォーマンスは実行できなかったが、この事件を機にEnglundさんは中国ツイ民の注目と支持を集めるようになった。EnglundさんのTwitterアカウントを現在1860人がフォローしているが、その大半が中国ツイ民だ。
だが、事件から間もなくしてEnglundさんは帰国を余儀なくされることになる。滞在ビザ切り替えを申請していたEnglundさんは8日、新たなビザの発行を受けた。ところがその滞在期間はわずか2日間。7月10日には中国を出国しなければならないという内容だった。中国ツイ民は「史上最短のビザ」と呼んでいる。
9日、飛行機に乗る前にEnglundさんはTwitterでこうつぶやいている。「今、帰国の飛行機にのるところです。すべての人々に感謝。私にこんな経歴を与えてくれた中国の国家安全部局に感謝」、と。