汪洋と薄熙来の代理戦争先月、広州市の県級市である増城市で、城管理(都市管理者)の一般市民に対する暴行を端に発した暴動が起きました。
(関連記事:「
燃え広がった広州市の暴動=胡錦濤は「厳罰方針」を認可―中国コラム」KINBRICKS NOW、2011年6月16日)
暴動発生当時、広東省のトップ汪洋は外遊中、広州市のトップは暴動の翌日にドラゴンボートのPRイベントに参加しており、対応出来ていたのか心配だったのですが、ちゃんと広東省に戻れております。
*写真は中国茉莉花革命発起者より。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。
■某さん6人の処罰
先日、増城市の事件現場である一番下級の鎮トップが責任を問われ、党の職務を解任されたのですが、この発表について批判が上がっています。
6つの「某」への問責は世論監督の弱体 (東方早報、2011年7月11日 )
「劉某を新塘鎮党委書記から解任する」「麦某を新塘鎮党委副書記から解任する」「大敦村党支部書記呉某、村委会主任盧某を党内厳重警告処分とする 」
「某」で埋め尽くされた7月8日付け『広州日報』、「広州市総治委通報”6・11”大敦村集団騒動事件」、先月広州市増城市で起きた「増城事件」の記事だ。処分は17人の「×某」に及ぶ。『広州日報』のみならず、広東省の多くのメディアが同じような処理をした。
なぜ問責された官僚の名前が出ず、×某なのか。某は何を意味し、何から逃げているのか。(以下略)
国家の機密や個人情報や未成年者保護などではないではない、法に基いた現地党委、政府の決定なのに、なぜ官僚の名前を隠すのか、と現役の政治局委員である汪洋を名指しで批判しています。某というのは事件の被害者や容疑者などに使われる表現です。
■上海地方紙が広東省トップを批判した意味
汪洋「弱者の声を失わないために、ネット情報の公平化を」(人民日報、2011年7月5日 )広州日報の記事が出る4日前、汪洋はネット民との交流イベントに参加し、「各級委、政府は厳しい批判と監督を受け入れる受容力を持たなければならない」と発言しています。
にも関わらず、『広州日報』紙面で解任された官僚の名前が伏せられていた事に対し、広州市や増城市に言うことを聞かせられていない汪洋の指導力を疑問視されているのです。『広州日報』は前出の通り、暴動のあった増城市を管轄する広州市の一部ですから、広州市や記事を転載した広東省内のメディアも汪洋を無視していることになります。
なぜ、東方早報という上海市の地方紙が汪洋を名指しで批判できるのか。当然上海市の支持があってでしょう。汪洋と対立すると人間と聞いてまず思い浮かぶのは、「打黒」運動以来犬猿の仲である薄熙来です。
■胡錦濤VS習近平の代理戦争か
建党90周年式典で胡錦濤が「文化大革命は何ら意義はなかった」と演説しており、今まで「紅歌」活動に対して態度を明らかにしてこなかった胡錦濤のはっきりとした薄熙来批判となりました。
突然の汪洋批判ですが、バランスを取るための報道なのだと思います。メディアを使った汪洋、薄熙来と、それぞれ彼らを支持する胡錦濤、習近平の代理戦争ともいえましょう。
汪洋が薄熙来の「紅歌活動」に熱心に支持を表明しないのも、打黒運動で顔に泥を塗られたからなのだと思います。
汪洋「運動式の反腐敗はやらないが、長く警鐘は鳴らす」(財経網、2011年7月13日 )「運動式」と言えば、まさに薄熙来の進める紅歌活動のような、文革期を髣髴とさせる人海戦術による政治運動を指しているのでしょう。わざわざ「運動式」などと表現する辺り、両者の対立は深いのです。
それにしても、メディアで政争を見れるとは思いませんでした。毎度この締めくくりですが、来年の党大会に向けてこうした動きは更に活発化し、激化するのでしょう。楽しみです。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。