中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年07月16日
いいか、おまえら、これからの時代は中国だ。中国で物を売らないとダメだ。中国は貧乏人ばっかりというのは昔の考え。今じゃ「新中間層」と呼ばれる、都会的ライフスタイルを送る消費者が3億人もいるんだぞ、3億人!この3億人に売るアイディアを考えないと我が社は死ぬ。その前におまえを殺す!
■所得税課税限度額引き上げで分かった「中産階級」の消失
6月30日、第11期全国人民代表大会第21回会議で個人所得税課税最低限度額の引き上げが可決されました。従来の2000元(約2万5000円)から3500元(約4万3800円)と一気に上昇。近年のインフレ、給与上昇に合わせての改訂ですが、政府発表によると課税対象者は従来の8500万人から2400万人に激減したのだとか。
「税金取られる人減りましたねー。良かったですねー。中国政府は慈愛に満ち満ちたすばらしい支配者ですねー」ということをアピールするための発表だったのですが、これにかみついたのが一部ネット民。おいおい3億人の新中間層はどこにいってしまったんだよ、と吠えています。米国在住のジャーナリスト・何清蓮さんのブログエントリー「3億人超の『中産階級』はどこに消えた?」がよくまとまっていますので、こちらを参照しました。
■中産階層とはなんぞや?!
さて、そもそも中産階層とはなんぞやということになるのですが、これまたいろいろと指標があります。2010年8月のアジア開発銀行の報告書によれば、「1日の出費が2~20ドル(約158~1580円)の人」がアジアの中産階層なんだそうで。
この定義に従えば中国の中産階層は8億人超。ただし、うち3億人は「中の下」に属しており、なんらかのアクシデントで低所得階層に脱落してしまうだろうとの但し書きがついています。とはいえ差し引き5億人は中産階層であるはずです。
2009年、中国社会科学院の陳学芸名誉学部委員による試算だと、「年収6万元(約75万円)以上の中国中産階層は全人口の22~23%程度。年1%ずつ増加している」とのこと。ま、ざっと3億5000万人が中産階層となる計算です。
■3億人の新中間層はどこに消えた?
月収3500元という課税限度額の定義は、中産階層の定義と一致するものではありませんが、少なくとも陳委員の3億5000万人説とは明らかに矛盾するもの。また日本企業が期待する「3億人市場説」にも大きな疑問を投げかけるものであります。
3億人の新中間層が一夜にして消えてしまった原因について、上述の何清蓮ブログは3つの可能性を指摘しています。
(1)3億人という数が過大評価だった。
(2)付け届けとか諸々の税務署に把握されない収入、いわゆる「灰色収入」が膨大である
(3)一部の富裕層に富が集中している。中産層なんか最初からいなかったんや!