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成長路線か再分配強化か?経済路線をめぐって広東省トップと重慶市トップが激論―中国

2011年07月17日

汪洋・薄熙来論争:経済成長か再分配か

前回のエントリー「上海地方紙が広東省トップを批判=胡錦濤VS習近平のバトルが幕開けか」に続き、広東省トップの汪洋VS重慶市トップの薄熙来のバトルについて。

まずは汪洋と薄熙来が犬猿の仲である経緯についてご説明します。これをやらないと対立している理由が分かりませんしね。


40107-Guangzhou / xiquinhosilva


*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


■汪洋と薄熙来が犬猿の仲である理由

汪洋は2007年まで重慶市トップの党委員会書記を務め、第17回党大会人事で広東省党委書記に転出しました。汪洋の後任として重慶に赴任したのが薄熙来で、就任後まもなく「打黒」と呼ばれる893撲滅運動を展開。公安系統から893と繋がっていた人間を一掃しました。

また、打黒運動の指揮には古巣の遼寧省からわざわざ昔の部下である王立軍を呼び寄せ、打黒運動が一段落した際には公安局長兼任のまま副市長に抜擢しています。薄熙来が政治局常務委員入りすれば、公安部長として厚遇するのでしょう。

逮捕された多くが汪洋時代から公安系統で使われていた人間ばかりなので、「打黒」は「汪洋は汚職を見逃していた無能」という薄熙来からの挑戦という意味合いを持っています。

汪洋も表向きは支持を表明しながらも、内心はハラワタが煮えくり返る思いだったでしょうし、広東省の新聞は「打黒」や「紅歌」をそれほど派手に報じてきませんでした。

この経緯があってから2人の中はよろしくありません。特に、来年秋の第18回党大会で共産党トップ9の常務委員入りを目指す2人にとっては潰しあう相手でありますが、ここに来て激しさが増してきました。公開の場で争いが見られるというのは、ヲチャーとしては嬉しい限りであります。


■今後の経済運営はどうあるべき?「パイ論」をめぐるバトル

「パイ論」薄熙来と汪洋公開論争(2011/7/15 RFI中文)

4日、ネット民とのオンライン交流イベントに参加した汪洋は、人民による政府の監督はもっともだとして、「なぜ群集は指導者を怒鳴れないのか」と疑問を呈しています。

ある微博ユーザーが薄熙来を「勃起来」(発音は両方とも"bo xi lai")と揶揄するつぶやきをして1年間の労働改造送り("KINBRICKS NOW" 2011/6/5 『シモネタツイートで共産党高官を風刺=それだけで1年間の労働教育処分に―中国重慶市』)にされたのですが、汪洋はこの事件を暗喩して批判しました。「彼(薄熙来)を非難するスレも少なくなかった」と公開の場で批判を加えています。とはいえ、汪洋が同じ事をされて高揚に構えている保障はどこにもありませんので、真似しないでください。

2人の対立は経済政策にも現れており、「広東省は改革開放の先頭を走ってきた」と自負する汪洋は、「パイを分け合うのではなく、新しいパイを作ることを重視すべき」と以前からの持論である経済成長路線を強調しています。


■人民日報の推しメンは薄熙来

対して薄熙来は市の三農問題討論会で「パイを分け合いながら大きなパイを作る」と富の再分配を重視した発言を繰り返しています。

汪洋「指導者が群集を怒鳴るのはいいのに、逆はなぜダメか」(2011/7/5 人民日報)

薄熙来の「パイ論」は三農問題解決に参考とするべき意義がある」(2011/7/11 人民日報)

両者の発言を伝える人民日報記事の見出しからも分かるように、人民日報はやはり薄熙来押し。

「貧富の差拡大を食い止めるのに使える」「三農問題を解決する参考にすべき、全体的な指導的意味を持つ」とまで書いています。重慶市は農村問題における社会実験("梶ピエールの備忘録。" 2011/5/8「Red Hot Chongqing-Pepper!」)を行っており、この発言もその一環のもの。今回、急に出てきたわけではないのですが、時期的に考えて汪洋の「パイ論」を受けて再度取り出してきたようにも見えますね。


■汪洋の部下まで離反?!

広東省委書記「基本的な公共サービスは外来人にも与えられるもの」(2011/7/13 南方日報)

この記事では、汪洋の部下である肖志恒(省党委常務委員、副省長)までもが「パイをいかにして大きくするかを考えるだけでなく、どうやって上手く分ければ良いか、公平的、合理的かを考えなければならない」と再分配を重視する発言をしています。

増城暴動を念頭に置いた民生問題を扱った文科会での発言なので、そちらへの配慮を示さなければならない面はあります。汪洋も民生問題への配慮には言及しているものの、直属の部下が間逆の「パイ論」を展開しており、汪洋と部下の間には政策面で溝がある印象を受けます。

温家宝とは金融危機の直後に中小企業対策で対立していましたし、反対に政治改革では温家宝と距離を置いていました。胡錦濤も表立ってかばうような言動もなく、広東省で汪洋1人が孤軍奮闘しているようにしか見えないのです。


*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。

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