2011年7月23日夜に発生した中国高速鉄道の追突・脱線事故。24日午後4時現在で35人が死亡、210人負傷と報じられている(
中国新聞網)。車両の位置を把握し、ストップをかける制御装置がなぜ働かなかったのかなど、原因究明は今後の課題となるだろう。
大惨事となった今回の事故で、中国高速鉄道に対する不信感は極限にまで高まっている。なにせこれだけの事故、北京・上海間高速鉄道の停電などとはわけが違う。今回は怒りに燃える中国ネット民の矛先が向いた2つの「プロパガンダ記事」を紹介する。
*中国新聞網の報道。
■日本の新幹線だって事故は多い。中国人民はもっと寛容になろう
北京・上海間高速鉄道の事故を受け、13日に新華網は「対京滬高鉄応多点寛容少点質疑」(北京・上海間高速鉄道になるべく寛容になろう、なるべく疑わないようにしよう)との記事を掲載した。レコードチャイナが日本語記事にしている。
「日本の新幹線だって事故は多い、寛容になろう」中国高速鉄道で相次ぐトラブル―中国メディア
レコードチャイナ、2011年7月14日
2011年7月13日、北京・上海間高速鉄道では開業2週間で3回目となるトラブルが発生した。故障を受け、新華網は「できるだけ寛容になろう、できるだけ疑いを少なくしよう」と呼び掛けた。
(…)
日本の新幹線をおとしめるわけではないが、定時性と安全性に優れる日本ですら故障は起きるもの。だが日本のメディアや乗客はそれを当然として受け入れていて、事実は速やかに報道されるがそれでバッシングが起きるようなことはないと述べている。
また相次ぐ中国高速鉄道の故障を奇貨として、米国への売り込み競争で出し抜こうと呼び掛ける日本メディアもあると紹介。むやみにトラブルを騒ぎ立てれば、国益を損なうと指摘した。
まあ、開業直後のトラブルはつきものともいえるが、中国鉄道部による言い訳ワード「磨合期」(調整期間)という言葉もあいまって、「俺たちはモルモットかよ?!」との批判が相次いだ。今回の事故で改めて「これでもまだ寛容でなきゃいかんのですか!!!」と批判されている。
■「速度向上の先鋒」李東暁
もう一つ、バッシングの対象となっているのが2010年12月14日に人民日報が掲載した記事「
「速度向上の先鋒」李東暁」。「0001番」の中国高速鉄道運転免許を持つ、すなわち中国初の高速鉄道運転士・李暁東さんの業績をたたえるプロパガンダ記事だ。
なんともすごいエピソードが2008年7月のもの。北京五輪直前の8月1日には正式営業が開始されるが、試運転が可能となったのは7月1日。運転士の研修を担当したドイツ人専門家は「北京まで運転できるようになるには2~3カ月かかるぜ」といういう中、
「速攻で運転できるようになれ!10日以内にやりとげろ!」
と上司に無茶ぶりされ、見事にそれを達成したというお話。
中国自主開発の高速列車だが、マニュアルはなぜかドイツ語で書かれているというトラップにも負けず、李運転士らは見事、10日間で運転技術をマスターした。それを見たドイツ人専門家は、ドイツで最高レベルの運転士を示すバッジを渡し、「李、おまえの勝ちだぜ。中国の運転士はたいしたもんだぜ」と激賞したという。
大躍進モード全開のプロパガンダ記事に、2010年当時も話題となったが、今、また蒸し返されて、「この促成栽培が問題だったんだろ!」とツッコミの嵐にさらされている。