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中国赤十字の三大腐敗=著名研究者の批判に反論―政治学で読む中国

2011年07月26日

中国赤十字社に対する「醜聞」2

以前中国赤十字について書きましたが、今日はその続きのような記事です。香港の中文大学の郎咸平教授がマイクロブログで指摘した中国赤十字の「三大腐敗」がネット上で話題になったために、中国赤十字が事実無根と否定したというものです。
(関連記事:「中国赤十字に対する「醜聞」」政治学に関係するものらしきもの、2011年7月15日)

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人民網』にも「红十字会微博回应郎咸平三大腐败指责 斥其无知」(中国赤十字、マイクロブログで郎咸平の三大腐敗批判に回答=指摘は無知がなせるわざと反論)という記事が掲載されておりましたので、如何に中国政府がこの問題を重要視しているかがわかります。
(他に『斉魯網』などを参照しました)

*当記事はブログ「
政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。


■指摘された中国赤十字社の「三大腐敗」とは

最初に郎咸平教授指摘の「三大腐敗」について説明しますと、

(1)「赤十字」というブランドの独占
(2)血液・骨髄の独占
(3)公益不動産の独占
の3つ。

(1)は赤十字というブランドを利用して関連会社を作っては、そこからあがる利益を享受しているという批判。(2)は、これがある意味一番悪質かもしれませんが、献血や骨髄は、一般の方から無償で提供を受けているにもかかわらず、それを医療機関に高値で販売し利益をあげているという指摘です。(3)は民間企業と合同で別荘などを建設してはそれを販売し、これまた多額の利益をあげているというものです。


■教授は「郭美美Baby」事件にも言及


それ以外にも郎咸平教授は、上記当ブログ記事でも触れた「郭美美Baby」事件にも言及し、赤十字を批判しております。彼は以前から中国における国有企業の改革の不徹底さや、きちんと制度化されていないことに対して批判を行ってきた方ですので、今回の指摘も従来通りの主張だったのかもしれません。

なお、その発言は当日の午後には削除されてしまったそうですが、かなりの反響を引き起こしました。既にいろいろな不祥事を起こしている中国赤十字としては、これ以上の批判を受けたくないと思ったのか、すでに削除されている発言に対して反論したというわけです。


■中国赤十字社の反論


中国赤十字は3つの批判それぞれに反論を行っているので、1つ1つ見ていきます。1つめの赤十字ブランドについての問題ですが、「赤十字」という名称はジュネーブ条約によるものであり、「中華人民共和国赤十字会法」などにより保護されていると反論しております。

はっきりいって全然回答になっていないかと思います。確かにジュネーブ条約では人命共助のために、非戦闘員である赤十字などの医療関係者を守るために、その他の者が赤十字の名称及び標章を使用してはならないことになっておりますが、別に彼はこのことを問題にしているわけではありません。

彼が問題にしているのは、赤十字という名前を利用して、金儲けのために関係団体などをつくっていることであって、中国赤十字が独占的に赤十字という名称を使っていることを批判しているわけではありません。

2つめの血液については、赤十字は献血の宣伝や、表彰活動に関与しているだけであって、具体的な血液の採取や、保管などは政府の衛生部が責任を持って執り行っているとしております。そのうえで、骨髄については、必要経費をとることがあるが、それ以上のものではないとしております。

実際問題ここいらは医療関係者でもない限り本当のところはわからないかと思います。それに私が聞いたかぎりでは、輸血が必要になればまず身内の者の血を使うのが中国では一般的なようです。というのも日本でも輸血に伴ういろいろな病気の感染が話題となりましたが、中国ではその可能性がより高いためという話を伺いました。

3つめについては、あくまで民間企業と共同で開発した老人ホームの一形態にすぎないし、現在までに2つしか建設されておらず、独占というようなものではないと反論しております。既に日本でもかなりの関連報道がなされているように、現在中国では不動産がバブルといっても良い状態で、かなりの値上がりをしております。

そのため、本来不動産会社でないところや、地方政府までもが開発に関与し、利益の恩恵にあずかっています。中央政府は不動産価格の値上がりを抑えるため、様々な規制を行っておりますが、子会社をつくって、自分は表に出てこない形で処理をするなど、いろいろな方法があるので、赤十字のように金があまっているところがこうした不動産開発に弁明に用いた2件以外、全く関与していないということを信じろと言うほうがかなり無理があるかと思います。

そのためこうした反論をそのまま信じろと言うのは、かなりきついかと思いますが、どうやらこの問題についてはこれで幕引きにするつもりのようです。そのため、これで何か大きく変わるとは思っていませんが、こうしたネットにおける意見を中国政府も全く無視できなくなっているということ、この点については望ましい変化であると考えたいと思っております。

*当記事はブログ「
政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。

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