中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年07月26日
■ライバルサイトを次々征服、サイバー天下統一へ
記事を書いた記者もよくわかっていない人だったのか、あるいは詳しすぎて素人への説明を省いているのかは不明だが、気合いを入れて読解した内容は以下の通り。
「騎士攻撃グループ」、彼らは200台のサーバを駆使し、DDoS攻撃でライバルサイトを次々と営業中止に追い込んでいたとのこと。DDoS攻撃とは複数のコンピューターがあるサーバーに一斉にアクセスすることで利用を困難にすること(Wikipedia)。
また、もっとすごいのはライバルのサイトが利用しているサーバ屋従業員を買収。運行を止めるという荒技もやっていたらしい。DDoS攻撃よりもこっちのほうがよっぽどすごそうな気がするのだが……。
攻撃対象は「私服広告代理」業者。「騎士攻撃グループ」も4つの「私服広告代理」サイトを経営していたので、ライバルを次々と潰していったのだろう。記事では攻撃によって相手の「広告代理権」を奪ったという書き方をしているが、サイトが正常に運営できなくなったからといって、タダで相手に渡すことはないはず。攻撃する一方で、安値でサイトを譲るよう交渉していたのかもしれない。
■「私服広告代理」業界ってなに?
このよくわからない記事の中でも、純粋に訳語がわからないという意味で困ったのが「私服広告代行」という言葉。「私服(=カジュアルな服)の広告をめぐる争いなのか?」などと頭を悩ませたが、調べてみると「私服」とは「私人服務器」(プライベート・サーバ)の略語だった。
プライベート・サーバ(エミュレートサーバとも)は、本来は企業が提供しているネットゲームサービスを個人で提供しているサーバ(Wikipedia)。同好の士がオリジナルをまねてプログラムを組んでいるケースもあれば、流出したプログラムを使ったり、改造したりして使っているケースもあるようだ。中国では後者のケースが主で明らかな犯罪だ。
企業のネットゲームでは、長く遊んでもらうためにレベルアップを難しくしたり、なかなか手に入らないレアアイテムを作ったりしているが、プライベート・サーバでは改造によってそのあたりのハードルを下げ、低価格かつ短時間で楽しく遊べるようにしているものも多いという。
■サイバー天下統一の利益は約9億円
「騎士攻撃グループ」は当初、プライベート・サーバを立ち上げたが、ユーザー集めに苦戦し利益を出すことができなかったという。そこでプライベート・サーバを宣伝するまとめサイト運営に鞍替え。グーグル中国で「私服広告」で検索すると、その手のサイトは山のように出てくる。ユーザーはこうしたサイトを通じて品定めして、いろいろなプライベート・サーバをわたり歩いているのだろう。
正直、どこまで市場規模があるのかわからない、この「私服広告代行」業界だが、「騎士攻撃グループ」は業界の覇権を握るべく、サーバ攻撃を繰り返したという次第。攻撃用にサーバ200台を借りるという武闘派集団はほぼその目的を達成していたという。
攻撃を開始した2009年8月から2010年12月の逮捕までに少なくとも7000万元(約8億7500万円)の利益をあげることに成功した。オフィスビルを勝ったり、一軒家の豪邸を買ったりと、グループのボスはぶいぶい言わせていた。
■サイバー攻撃大国・中国
中国といえば、今や押しも押されもせぬサイバー攻撃大国。DDoS攻撃といえば、中国人権関係ニュースを多く掲載する博訊網が長らく攻撃対象とされている。他にも米政府など他国への攻撃がしばしば報道されるが、サイバー攻撃は他国を対象としたものだけではない。中国国内でも激しい「サイバー内戦」が繰り広げられているようだ。