中国メディアの味千ラーメン・バッシングがひどすぎる!
どんなバッシングになっているのか説明しようかと思いましたが、なんと朝日新聞が人民日報記事の翻訳を転載しているので、そちらを見ていたければ、と。
味千ラーメン 大陸部でのみ品質問題が発生したのはなぜ?
朝日新聞(東方網報道を転載した人民日報記事の翻訳)、2011年7月26日
あるメディアがこのほど、日本式ラーメン・チェーン「味千ラーメン」の豚骨スープは、店舗で煮込んだものではなく、粉末と調味料から作られており、1食分のコストはわずか数毛(1毛は1元の10分の1、約1.2円)であると報じた。味千ラーメン中国本部はこれに対し、「スープは濃縮液を還元したものであり、この濃縮液は豚骨を煮込んで得られたもの」と回答。しかし、検査によるとラーメン1食分に含まれるカルシウムはわずか48.5ミリグラムだったが、味千ラーメンのホームページでは1600ミリグラムと書かれていた。東方網が伝えた。
味千ラーメンはこれまでずっと、「栄養豊富」というイメージをアピールする一方、大陸部の一般的な麺料理店と比べると高価なラーメンを打ち出してきた。この味千ラーメンに対して今、かつてない疑問の声が上がっている。
味千拉面 / livepine
後述するとおり、栄養価表記には確かに問題があったものの、セントラルキッチン方式で作ったスープを各店舗に配送することに問題があったとは思えない。どこのファーストフードチェーンもやっていることだ。
だが、記事では
さらに疑問を感じるのは、味千ラーメンのスープの問題がなぜ中国大陸部だけで発生したのかだ。
豚骨や各種の魚の骨を長時間煮込んで作った豚骨スープで有名だ。創立から約半世紀を誇るこの高級ラーメン店が、名ばかりだとは思えない。
もし実質が伴わなければここまでの業績を上げることは不可能だ。問題は、味
千ラーメンの問題が大陸部だけで発生したということだ。
高額の賠償なしに、マクドナルドが自主的にコーヒーの温度を下げるとは思えない。中国大陸部でのみ味千ラーメンの
「体質が変わった」のはある意味、「南橘北枳(人は交わる相手によって善人にも悪人にもなる)」ということではないだろうか。
と、工場でスープを作っていたことが問題と決めつけ、他の国ではこんなひどいことしていないんだろう、中国の罰則がぬるすぎるからだ、と「もっと厳しい食品法規制導入せよ」論に落とし込んでいる。味千ラーメンの総店舗数は720店舗と公式サイトに書いてあるのに、「300店舗以上を展開する」と超古代の記事からひろった数字を載せているあたりも含め、激しくやる気のない記事だ。
ちなみに朝日新聞は人民日報との提携により翻訳記事を掲載しているが、朝日新聞側はノーチェック。送られてきた記事には一切手を入れられないのだという。以前にも記事「
あの「立体バス」、来年から運用開始へ?!天下の朝日新聞様が釣られているッッッ」で紹介したことがあったが、惨い記事が多すぎる。
■科学的に合成されたスープ、との誤解
味千(中国)公式サイトには、今回の批判報道に対するコメントが掲載されている(
味千ラーメンの公式回答、PDF)。セントラルキッチン方式はごく普通に採用されているよとがんばって主張しているが、同時に「工場で作ってはいるが、ちゃんと豚骨作っているよ」とも説明している。
どうも「工場で作っている=豚骨とか自然材料を使わずに科学的に調合したスープ」という謎の誤解が広められているようだ。実は今年4月に広州日報が「
安価な日本式ラーメンは暴利をむさぼっている」という記事を掲載した。「卸問屋で日本風ラーメンの粉末スープが売られているよー。なんかどんぶりに油汚れがつかないんだけど、通常の食品が原料じゃないのでは?安いラーメン屋はみんなこのスープを使っているらしいぜー」という内容だ。
この記事が伏線となって、「セントラルキッチン方式=科学の力で作り出されたスープ」という誤解が広がったのではないだろうか。
■カルシウム問題
一方で明らかに問題だったのがカルシウム含有量の表記。「スープ360ミリリットルで牛乳4杯分のカルシウム」とうたっていたが、実は薄める前の濃縮スープを使って検査した結果だったという。凡ミスなのかわざとなのかはわからないが、問題は明らかで、味千ラーメンも謝罪している。
ちなみに食品の効能を狂信的に信じる
フードファディズムが蔓延しているという点では、日本も中国も五十歩百歩だ。中国では特にカルシウム信仰がすさまじい。テレビをつければ、「カルシウム補充」をうたう怪しげな健康食品のコマーシャルがばんばん流れているのだ。
中国本土に585店舗を展開する味千ラーメン(中国)は資本的に見れば完全な中国企業(
日経ビジネス)。中国人のカルシウム信仰もよく理解したうえで宣伝文句としたのだろうが、脇があまかったとしかいいようがない。
■本当の問題は別にある
さて、今回の味千バッシングを「高速鉄道事故から目をそらすためだ」と勘ぐる人もいるようだ。もちろんその可能性も否定できないが、単純に「身近な食品問題は盛り上がるニュースネタだから」という可能性が高いように思う。
記事「
中国ケンタの新製品「カニ」がステキすぎる……=できすぎCMが招いた風評被害」でも紹介したことがあるが、「外資大手フードチェーンが中国人をだましている!」というネタはちょくちょく見かけるもの。「食品問題が心配だ」「外国資本は中国人をだましている」という猜疑心が結びついて関心を集めるネタだからだろう。
こういうどうでもいい話が盛り上がることで、本当に大事な食品安全問題が覆い隠されてしまう。それこそが問題だと思うのだが……。
そんなに骨折する人が多いんだろうか。
日本のコラーゲンみたいなもんなんだろうな。