薄いスープよりもゴムみたいな麺をなんとかしてほしい中国No.1ジャパニーズフードチェーン店・味千ラーメンが窮地に立たされているみたいですね。
「濃縮還元スープ、栄養表記虚偽」味千ラーメンに批判集中―中国 (サーチナ) - Yahoo!ニュース(2011年7月26日)味千ラーメンといえば、
中国人に「日本のラーメンとはトンコツラーメンしかない」と強烈な刷り込みした罪深いチェーン店という認識です。
IMG_4098 / tompagenet
*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。
このニュースをボクが知ったのは7月24日のこと。2chまとめサイトの新着トピックスでタイトルだけ見たのですが、そのサイトがFC2ブログだったので、ネット検閲のために見られず。当日はこれとは比べものにならない大事故が起きていましたし、特に気にしていませんでした。
しかし翌25日に百度のニュースサイトを開いてみますと、検索ワード上位に『味千 骨湯』などと書いてあります。そしてニュースを読むとけっこう大きなニュースに発展しているじゃありませんか。
今更ながら事件の概要を説明しますとこんなところです。
■濃縮還元液の仕様が発覚、カルシウム服有量の誤りが明るみに
味千ラーメンはこれまでラーメン1杯分360mlのスープに、牛乳の4倍に当たる1,600mgものカルシウムが入っていると宣伝していました。しかし、味千ラーメンで働いていたというネットユーザーが、味千のトンコツスープは工場で煮込んだトンコツから作られた濃縮還元液と粉末調味料によって作られていると暴露。
そしてその後の調査によって、トンコツスープの素とも言える濃縮還元液には360g中に1,600mgのカルシウムが含まれていることは間違いないのですが、客に提供するために希釈したラーメンにはカルシウムがたった48mgしか入っていないことまでバレてしまいました。
味千拉面 / Ajisen Ramen / livepine
実はボクも味千ラーメンの店先で『1,600mgのカルシウム云々』と書かれて白濁としたスープの写真が掲載されたポスターを見たことがあります。しかし恥ずかしながらそれを見ても、その数値に素直に感心するだけで疑問を抱くことはありませんでした。
それよりも看板に書かれた『ヘルシーフード』という言葉に目を惹かれてしまいます。なんでラーメンみたいな食い物が健康食なのでしょうか。味千は以前から『トンコツスープは美容食』といった宣伝を打ち、メニューにも『健康』という言葉を押し出していました。
カロリーが高くて塩分が濃く、全然トンコツらしさを感じさせないスープがどうしてヘルシーなのか。いくら考えても答えは出ません。
■日系企業への信頼が裏切られた反動か
今回の一件で味千ラーメン株を暴落しています(新浪網、2011年7月25日)。この騒動の背景には日系企業への信頼があったのではないでしょうか。とある記者は記事の中でこうつぶやいています。
「さすがに日本のチェーン店なんだから悪巧みなんかあるはずがないって勝手に思っていた」、と。
今回の反応の大きさが日系企業への期待の裏返しだとしたら嬉しくもあり、また悲しくもあります。しかしカルシウムの数値を誤魔化していたのは確かに問題ではあるものの、濃縮還元液を使用していたことが果たして
『悪巧み』(原文では搗鬼)になるのでしょうか。
濃縮還元液を使っていようがきっちりトンコツを煮ているんだから、そこまで怒ることはないと思うんですけどね。
■味の水準を保つ為には仕方がないことこのニュースを読んで真っ先に思い出したことがあります。以前、友人と過橋米線の店に行ったときのことです。適当にメニューを頼み終えたあと友人は店員に
「調味料は別でね、自分で入れるから」と妙なことを言いました。
(*過橋米線:煮えたぎったスープが入ったお椀に、肉や魚の切り身や米でできた麺を投入する。テーブルで調理するメニュー。wikipedia)そして持ってこられたお椀に入っていたのは上品という言葉でも形容できないほど極薄のチキンスープでした。器の横には喫茶店でコーヒーに入れる砂糖のような袋が添えてあります。この袋こそさっき友人が店員に言った『調味料』、すなわち
過橋米線スープの素でした。
確かに過橋米線のスープは美味しいことは美味しいのですが、飲むには不適切なぐらいしょっぱくてノドがイガイガするんです。しかしスープにその調味料を袋の半分ほど入れたら、日本人の口に合う、何ともいい塩梅の薄味チキンスープが仕上がりました。
こういった体験もあり、ボクとしてはチェーン店では味を一定の水準に保つために、ある程度の材料をレトルトで工面することは仕方のないことだとは思うのですが。
■隠していたわけではないそれに、味千ラーメンの社長が以前のインタビューで、セントラルキッチンや麺は現地法人に任せてある、と日本のメディアにではありますが、公言していますからね。別に隠していたわけじゃありません。
熊本の小さな飲食店「味千ラーメン」は なぜ中国で一番有名な日本の外食チェーンになれたのか(ダイヤモンド・オンライン、2010年10月15日)■「味千ラーメンは貴族の食い物」先ほど挙げた記者の反応を見てみると、中国人の怒りの対象は数値の偽証などではなく、濃縮還元液を使用していたことにあるようです。この記者は
1杯5元(約60円)の蘭州ラーメンを引き合いに出し、
「味千ラーメンは貴族の食い物だ」と言い切っています。
確かに最低でも1杯20元(約242円)はする味千ラーメンは、量も少ないですし麺料理としては高価なのかもしれません。つまり彼は、20元(メニューによっては30元(約363円)以上)もする貴族のラーメンがまさか濃縮還元液と粉末調味料で作られていた紛い物だったなんて!と憤慨しているんでしょうね。
けれども、例えば日本から北京に店を出した
『まるきんラーメン』北京支店や横浜家系ラーメンの
『無敵家』のラーメン1杯の最低価格は30数元(約400円程度)です。
知る人に言わせれば
「日本の味とはちょっと違う」らしいのですが、2店舗とも味千ラーメンとは比べものにならないほど美味しいです。特に、箸を上げるとドロドロとした乳白色のトンコツスープがストレート麺に絡みついて生まれる重量感は、嬉しいの一言に尽きる。これなら30元でもしょうがないと納得出来ます。
だから味千ラーメンを下位に置き、日系ラーメン屋を至上とする在中日本人には、濃縮還元液に
「騙された」と憤る中国人の気持ちは理解出来ないでしょう。
■続く加熱報道味千ラーメンの報道は未だに続いています。KINBRICKSNOWでは朝日新聞が翻訳した強烈な内容の記事を取り上げています。
(関連記事:「
中国メディアの味千ラーメン・バッシングがひどすぎる件=朝日新聞まで加担」KINBRICKS NOW
、2011年7月26日)
他にもいろいろ報道があるのですが、気になったのは、市場でトンコツスープの素を買ったという記事です(
解放牛網、2011年7月27日)。豚肉が高騰しているからこれを買うほうが便利だし安く済む。という店主の言葉に、容器のラベルに書かれた
『直接食べないでください』という注意書きを見て肝を冷やしたという記者の感想を入れるなど、もっともらしいことを書いています。
だけどこれを味千ラーメンが使ったなんて証拠はありません。記者自身それについては言及していませんが、この書き方だとまるで関係があるように見えます。
「濃縮還元液は絶対に許さない」と叫び、味千ラーメンを責めるのは勝手です。しかし、だったらそれと同時進行で味千ラーメンの人気に便乗して中国人が作ったとしか思えない
長野ラーメンや富岡ラーメン、
福井ラーメン(潰れたけど)などのコピーラーメン屋にもメスを入れて欲しいです。
そして最後にこの記事について一言。
「濃縮還元スープ、栄養表記虚偽」味千ラーメンに批判集中―中国 (サーチナ)
インスタントラーメンと変わらないではないか?というお怒りですが、いったい中国に味千ラーメンクラスのインスタントラーメンがあるのか甚だ疑問です。いくらあんまり美味しくない味千ラーメンでも、中国のインスタントラーメンと比べられるのは心外でしょう。
というよりこの濃縮還元液及び粉末調味料の問題って、行き着く先は中国のラーメン食品企業になるのでは?第一、5元(約60円)の蘭州ラーメンを衛生面の心配なく食べられるんだったら、味千ラーメンの材料がなんであろうと別段気にすることじゃないと思うのですがね。
*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。