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2011年07月28日
■遺族のシンボルとなった楊鋒
事故の約20分前にショートメールが妻から送られてきた、楊鋒自身が家族のチケットを購入し紹興駅まで送り届けたなどの涙を誘うエピソードも満載。中々の男前でファッションセンスもよく、遺族代表のような存在になっていました。
鉄道部報道官が、同乗しながら助かった記者に頭を下げた件について聞かれると、「頭を下げてクビにすれば問題は解決と考えているなら、中国の事故はこれからもっと増えるだろう」と一刀両断するなど、歯切れのよさが新聞ウケしたのでしょう。
事故は負傷した義父からの電話で知り、義弟と共にすぐさま事故現場に駆けつけたのが24日午前1時。妻の変わり果てた姿と対面したのは、到着から丸一日が過ぎた25日午前でした。現場の情報不足で妻との対面が遅れた楊鋒は、もし救助を続けていれば妻は助かったのではという思いを抱えていました。「生命反応なし」として捜索を打ち切られた後に女の子が助け出されたケースもあったからです。
「救助隊が領導(お偉いさん)の訓示を待っている時間がもったいない」「救助にショーは必要ない」と当局への怒りをあらわにし、「記者会見を開く用意がある」「賠償はいらないが、全ての事実を明らかにしてもらう」と記者に話しています。
「賠償金はいらんから真実を語れ」という怒りの声は他の遺族からも出ています。原因究明より賠償金額の話し合いを先にした対応も、遺族の怒りに油を注いでいるのだと思います。
早期の合意に対しては奨励金を出すとの情報が中国新聞網などで報じられましたが、温州市宣伝部が「報道はデマ」と否定、合意の時期にかかわらず一律50万元(約605万円)を支払うと発表しているのですが、早期合意で賠償金増額という「デマ報道」が遺族と世論の怒りに火を注いだと判断して、手を打ってきたのでしょう。
■突然変化した楊峰の態度
前回のエントリーでは最初の遺族が合意したと書きましたが、26日には、楊鋒も鉄道部工会主席との面談を行っています。
楊峰の態度が突然大転換(揚子晩報、2011年7月27日)
面談前はあれだけメディアの前に露出し、メディアを利用して世論を味方に付けようとする意図も見えた楊峰ですが、面談後に記者には「良い反応をもらった。賠償問題の話はしたが、悪いけど内容は話せない」と言うと、取材を拒否して記者の前から姿を消しています。
■微博での意味深なつぶやき
26日午後、騰訊微博でアカウントを取った楊峰は、意味深なつぶやきを発します。
天国には5人ではなく40人が私を見ているが、私は無力だ。許して欲しい。もし続ければ、6人目の家族を失う。皆さん申し訳ない。私は利己的だ。