中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年07月28日
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脱節的国度(バラバラの国)
韓寒ブログ、2011年7月26日(すでに削除済み)
「なんでそんなにパニックになっているの?」とあなたがずっと問いただしてきたのに、彼らは「俺たちはちゃんと忍耐強くやっている」と思い続けている。
「なんで正しいことと間違ったことを逆にしているの?」とあなたがずっと問いただしてきたのに、彼らは「俺たちはちゃんと公正明大にやってきた」と思い続けている。
「なんで殺人犯をかばうの?」とあなたがずっと問いただしてきたのに、彼らは「俺たちは友人を厳しく批判してきた」と思い続けている。
「なんで真実を隠すの?」とあなたがずっと問いただしてきたのに、彼らは「俺たちは透明性を担保している」と思い続けている。
「なんでそんなに腐敗しているの?」とあなたがずっと問いただしてきたのに、彼らは「俺たちは苦しく質素な生活を送っている」と思い続けている。
「なんでそんなに傲慢なの?」とあなたがずっと問いただしてきたのに、彼らは「俺たちは低姿勢でやってきた」と思い続けている。
あなたは自分が不公平に扱われていると不満を感じているが、彼らもまた同じように思っている。「清朝の統治下では、市民はテレビだってみられなかったじゃないか。今では多くの家にテレビがある。これはすごい進歩だ」と彼らは思っているのだ。
「これを建てよう、あれを建てよう。」彼らはそう考える。その過程で何が起きたのか、その建物が誰へのプレゼントなのか、そんなことはあなたが気にすることではない、少なくともあなたが使うことができるのだから。以前、列車で北京から上海に移動すれば、丸一日かかった。今は雷さえなければ、5時間で着くのだ。なぜあなたは感激しない?なぜ疑いに満ち満ちているのか?彼らはそう考えている。
(雷さえなければ:開通したての北京・上海間高速鉄道で、「雷が原因」の停電事故が起きたことへの風刺)
たまたま安全事故が発生した。すると、中央政府の最高指導者たちは、「私たちはちゃんと気にかけています」と表明する。人員を派遣して記者の質問に答えたじゃないか。本来17万元(約213万円)の慰謝料を50万元(約625万円)も支払ったじゃないか。それどころか、兄弟まで罷免したじゃないか。ここまでやってやったのに、あなたたちは細かい問題を気にしている。考えが頑迷すぎるのではないか?大局観はないのだろうか?どうして私たちに謝罪させようとするのか?私たちは犯罪を犯していないのに。これは発展の代価なのだ。彼らはそう考えている。
遺体を速やかに処理するのは私たちの慣例だ。遺族が協議書に早くサインすれば多くのボーナスがもらえる。遅ければ少ない。これは私たちの兄弟たちが地上げ活動を通じて証明した有効な手段だ。列車の残骸を埋めたのは確かに愚かな判断だったが、それもボスが命じたことだ。ボスは面倒になりそうなものはなんでも埋めてしまえばいいと思っているのだ。
間違っていたのは真っ昼間に作業を始めたこと、穴を大きく掘りすぎたこと、それから宣伝部局とちゃんと連携していなかったことだ。現場のカメラマンをちゃんと管理できていないなど準備作業が十分ではなかった。今回の事故の最大の教訓。それは今後地面になにかを埋める時には、その物体の体積をよく考える必要があるということ、そして秘密裏に作業すること。今回はこの点に怠りがあった。彼らはそう考えている。
今回の救援活動は成功した。速やかに行われた。配置も万全だし、秩序だって動けたし、よくやった。唯一残念だったのは世論の制御に失敗したことだが、それも私たちの責任ではない。世論の管理は私たちの管轄ではないのだから。彼らはそう考えている。
大きなところだけ取り上げても、五輪を成功させたし、農業税を撤廃した。それなのにあなたたちは褒めるどころか、枝葉末節を責め立てる。どういう了見なのだろう。私たちは北朝鮮よりも厳しく政治的にしめあげることだってできる。スーダンよりも経済的に貧しくすることだってできる。ポル・ポトのクメールルージュよりもっと激しい統治だって可能だ。私たちはそれらの国々よりも、もっと多くの軍隊を持っているのだから。だが、そうはしてこなかった。それなのにあなたたちは感謝しない。それどころか謝罪を求めているのだ。私たちはこの点に不満だ。
この社会では金持ちも貧乏人も、権利ある者もなき者も、みなが不満を覚えている。一人残らず全員が不満を感じている国なのだ。各階層はもうバラバラだ。この巨大な国を形成するそれぞれの部位は惰性で動いているだけだ。もしこれ以上改革をしないままでいたら、バラバラの国は脱線へと進むだろう。
国はなぜ進歩しないのか?なぜならば彼らの多くは毛沢東、スターリンの時代と自分たちを比べているからだ。だから不満を感じる。今はもう十分に開明的じゃないか、公正じゃないか、配慮しているじゃないか、低姿勢になっているじゃないか、これだけやるのは大変なことだ。彼らはそう考えている。
科学技術に裏付けされた時代の前進の歩み。彼らはそれを自分たちが主体的に開放した結果だとの幻想に取り憑かれている。あなたが彼らを批判すればするほど、彼らはより大きな権力を求めるようになる。あなたが彼らをバカにすればするほど、彼らは毛沢東の時代を懐かしむようになる。
(科学技術に裏打ちされた:高速鉄道問題でも大きな力を果たしているネットの力を指すもの)
ある国家機関に勤める友人がこういった。あなたたちは満足することを知らない。君のような文学者は40年前ならば銃殺されていただろう。今の時代は進歩しているのか、それとも退歩しているのか、どっちだね、と。
(40年前:文化大革命の時代)
私はこう返した。君たちこそ満足を知らない。君のような考えは90年前にいえば、人を笑い死にさせていただろう。今の時代は進歩しているのか、それとも退歩しているのか、どっちだね、と。(900年前:辛亥革命の時代。引き算を間違えていたため修正。ご指摘感謝です)(90年前:1921年、中国共産党建党の年)―――――――――――――――――――
野暮を承知で少し解説すると、「あなたたち=一般市民、あるいは政権批判的なネット民」「彼ら、私たち=中国共産党の官僚」という形。名指しこそはしていないものの、厳しい政権批判であることに違いはありません。またしばらくブログが更新されなくなるかもしれませんね、とほほ。
それにしても「毛沢東、スターリンと比べて俺たちは開明的なのにな~」と中国共産党のエラい人々が不満をもっているという指摘は、なるほどと納得させられるもの。習近平国家副主席のメキシコ失言、「中国は13億人を食わせている。革命も飢餓も輸出しないし、他国に迷惑をかけてないんだから、なんか文句あるか」を想起させる指摘です。
某所で話題になってる地元住民が列車残骸を掘り起こしたら遺体が出てきたの真偽を宜しければお願いします。あと対応がこれほど二転三転してるのは鉄道部の権力の大きさの為なんでしょうか?