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2011年07月29日
■一人っ子政策の罰金=ヤクザのみかじめ料
「一人っ子政策」を管轄する現地組織がひどすぎる。大河網に河南省鄭州市住民の通報が寄せられた。罰金徴収のシステムがヤクザのみかじめ料と変わらない。ボスに上納金を支払った残りの金は、地元幹部が好きなように使える。「人口抑制」という政策目的のためではなく、自分たちの私腹を肥やすために現地組織はせっせと罰金を徴収しているのだと訴えている。
たんなる証言だけではない。住民は証拠も提供している。それは鄭州市人口・計画生育委員会による通達「「第3四半期社会撫養費徴収に関する通知」(2010年8月24日発行)。市内に28ある郷鎮街道弁事処の上納金リストが掲載されている。この金額を市当局に納めれば、残った罰金は街道弁事処のものとなる。
■「もっと産みなよ!罰金取れるから!」本末転倒の一人っ子政策
罰金をとればとるだけ自分たちの実入りが増えるとあれば、担当者のやる気もでようというもの。鄭州市古城弁事処新西居民委員会ではこの3年間に最低でも240万元(約3000万円)の罰金を徴収しているという。同弁事処の上納金は年12万元(約150万円)、3年で36万元(約450万円)。差し引き204万元(約2550万円)が弁事処の収入になった計算だ。
こうなってくると、市民がお国のいうことを聞いて2人目以降を産まなくなると、官僚組織は商売あがったりとなってしまう。なので、2人目出産は黙認しておくケースも少なくない。実際、鄭州市では2人目、3人目の子どもを持つ親が多いのだとか。ある市民は「一人っ子政策を破れと官が押しつけているようなもの」とこぼしている。
大河網の取材を受けた鄭州市人口・計画生育委員会の担当者は「罰金徴収額のノルマを決めるなんて許されないこと」と断言。その後、「最近担当になったばかりで詳しいことはよくわかりませんけど」とトーンダウンしている。通報した市民によると、今年のノルマ文書はまだ発表されていない。しかし、各弁事処は昨年の数値に基づいて罰金徴収を進めているという。
とんでもない話だが、こうした利権構造は中国の政府関連部局では一般的。例えば環境保護局も企業が罰金を払ってくれないとやっていけない仕組みとなっている。かつて財政が困窮し政府関連部局全部を食わせられなかった時代にやむをえず導入された「各自、自力で生き残れ」という構造が今も残っている。財政が豊かになった今こそ改革の時期のはずだが、一度肥大化した利権集団を解体するのは容易なことではない。
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