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2011年07月30日
ところが27日に開かれた国務院常務会議(総理、副総理、国務委員で構成される会議。日本の閣議に相当)で、温家宝は「調査処理は公開し、透明で、結果を社会に発表して、人民に真に誠意と責任ある説明をしなければならない」と強調しています。
事故車両を現場に一旦埋めて、批判が高まると掘り起こして事故原因の調査にまわす。温家宝の批判派意味不明な対応をしていた鉄道部に向けられたものだと思っていました。しかし、よく考えれば現場の指揮に当たっているのは張徳江なのです。
■消えた張徳江
会議が開催された翌28日、温家宝が「飛行機」で温州に到着します。
*中国広播網の報道。
温家宝を中心に左右にお供の官僚が付き添うのですが、現場で撮影された写真を見たところ、中央から温家宝に同行した馬凱・国務委員、盛光祖・鉄道部長らの顔は発見できたものの、事故発生後に「胡錦濤総書記と温家宝総理の委託を受け、関係部門の責任者を率いて現場に駆けつけた張徳江副総理」の姿が発見できませんでした。
この写真では右に盛光祖、左に馬凱となっています。2人とも中央委員でしかありませんから、政治局委員の張徳江がいれば、盛光祖か馬凱のどちらかが消えた3ショットという構図になったでしょう。
■温家宝と張徳江の対立
温家宝は現場で開いた記者会見で「事故発生直後に鉄道部の責任者(恐らく盛光祖)に「救人」(人命救助)という2文字の指示を出した。彼も証明してくれるだろう。鉄道部門はこれをしっかりとやったか、群衆に実事求是(事実に基き真実を追求すること)の回答をしなければならない」と、鉄道部の対応を批判しています。
張徳江は24日に「これまでの救助活動は中々良かった」と鉄道部寄りの発言をしています。胡錦濤と温家宝が救助を最優先にするようにと指示したにもかかわらず、救助活動が打ち切られた後に女児が助け出されるなど生命を軽視したずさんな指揮に、温家宝は疑問符を投げていることになります。
また、「調査は機械設備の問題化管理の問題か、メーカーの問題なのかを追及する」としており、同じく24日の「高速鉄道に品質的な問題は無い」というお気楽な発言と真っ向から対立。
確かに張徳江の発言は、事故直後という点を差し引いても軽すぎる気がしますし、担当する鉄道部門の失態をカバーしようとするつもりがあったのかもしれません。温家宝は指揮能力から保身の術まで、事故後のあらゆる言動を批判しているのです。
独立王国の鉄道部解体と一緒に、邪魔な張徳江も消しちゃおうとする動きがあるんでしょうか。何にせよ、行方不明なのに変わりはありません。張徳江の行方や消えた理由をご存知の方、ぜひともお教え下さい。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。