6月30日に鳴り物入りで開通した北京・上海間高速鉄道。東方早報は相次ぐ停電、遅延トラブルを受け、車内はがらがらと伝えたが(
レコードチャイナ)、
MSN産経は「ほぼ満席」と報道。乗客がいるのか、いないのか、メディアによって食い違うよくわからない状況が続いている。
さらに中国鉄道部は7月の平均乗車率は107%と満席以上だったと発表し、さらに混乱を深めた(
中国広播網)。がらがらなのか、それとも立ち席が出るほどの人気なのか、真実やいかに?
李倩 / Radio Nederland Wereldomroep
■平均乗車率107%の真実
「がらがらなのに、107%ってなんだよ?!」とみなが頭を悩ませていると、あっさり答えが出てしまった。2日付人民日報が鉄道部発表の「平均乗車率」がどのように計算されているかを発表している。
累計乗車人数 / 定員 =乗車率
が計算式となるのだが、ポイントは累計乗車人数。途中乗車、途中下車する人数も含まれるため、100%を上回るのは何の不思議もないという。
例えば、東京発名古屋経由大阪駅の新幹線を例に考えてみよう。東京発の時点で定員いっぱいならば、これで100%。名古屋で全員が下車し、また新たに定員いっぱいの乗客が乗り込んできたらさらに100%追加で、乗車率は200%になる計算だ。
計算式が明らかになれば、107%という数字は何も奇妙な数字ではないことがよくわかる。問題はこの数字だけではがらがらなのか、席が埋まっているのか、判断がつかないことだ。
■高速鉄道は便利だが、北京・上海間高速鉄道は微妙
「中国に高速鉄道は必要か?」との問いを建てたとすれば、答えは間違いなくイエスだろう。速度が飛躍的に向上しただけではなく、輸送能力自体が向上した。切符を予約するだけで一苦労といった時代を考えれば、天国と地獄だ。
航空機、鉄道、バスという陸路交通の優位を考えた時、800キロ以内の中距離輸送では鉄道が圧倒的な優位性を示すと言われている。
7月30日付朝日新聞は追突事故を起こした永嘉―温州南間の高速鉄道がほぼ満席だったと報じているが、利便性を考えればそんなに不思議なことではない。「中国はまだ不必要な高速鉄道を作った」などという主張を日本のテレビ番組で目にしたが、ニーズは十分にある。
ただ問題は北京・上海間高速鉄道を全路程で乗るニーズはそう多くないのではないか、航空機との競争で本当に優位に立てるのかという点だ。北京・上海間高速鉄道の全長は1318キロ。むしろ航空機の優位が生きる距離ではある。その意味で北京・上海間高速鉄道が成功するかどうかは微妙なところ。空席が多いというのも納得だ。
とはいえ、開業前に突如決まった「減速」に伴い、「のぞみ」的な直行便の数が減らされ、「ひかり」的な途中停車駅が多い列車が増発された。その意味では中距離以下の地域内移動にとっては非常に利便性が高く、多用されるものになるだろう。もっともそうした利用客がメインになったとして、それで黒字化できるかは大きな疑問ではあるが。