中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
■完全に雲隠れした張徳江
事故発生から72時間というをタイムリミットを大幅に繰り上げて救助活動を打ち切る命令を下したのは、鉄道部ではなく張徳江であり、その後伊伊ちゃんという女の子が救出されて全国の注目を集めたため、温家宝の批判も受けた今はお隠れ中という説が有力です。
救出総指揮張徳江の行方が謎(東方日報、2011年8月1日)
ある鉄道部の職員が明かしたところによると、鉄道部長には捜索終了の命令を出せる権限はなく、あるとすれば現場の指揮を取っていた最高責任者の張徳江だろうと指摘。
張徳江は、現場ではなく、遠く離れた温州繁華市区にある5つ星のシャングリラホテルを指揮本部と定めていたので、現在はそこで息を潜めているのではないかと思われます。
■党大会を見越しての保身?
陰謀論的に言うと、陣頭指揮をすればほんの小さなミスでも針小棒大に捉えられて足をすくわれかねず、来年の党大会で政治局常務委員への昇格を目指す張は保身を第一に考えて表に出てこないというのもあります。
国務院事故調査チームには、いつもなら自分が担当するところ国家安全監督総局の駱淋局長を当てており、なるほどと思わせる部分もあります。この駱淋も、もう一つ何をしているか報道が少ないのですが。
ただし、既に先頭車両を埋めた後に掘り返したり、救助活動を切り上げるなど大失点をしており、保身どころではありません。この陰謀論は成立しないのではないでしょうか。
■鉄道部捜査には張徳江が当たるべき
鉄道部という日本でいえば「省」に当たる部門への調査に、「庁」である安全監督総局の局長がどこまで深く入り込めるのかという疑問もあります。それ以外の顔ぶれを見ても、監察部、鉄道部、全国総工会、事故が起きた浙江省の副部長級(副大臣級)と「レベルが低く」、最初から調査に本腰を入れていなかったという謗りは免れないでしょう。
これだけ国際的に注目を集め、本気で事故を調査するつもりなら、少なくとも鉄道部より上の人間が総指揮に当たるのが筋。張徳江ならこれまで特大クラスの炭鉱事故で救助の陣頭指揮を取った経験がありますし、安全生産と鉄道担当の副総理にして政治局委員なのです。職位的にも申し分ありません。
国務院に真剣に解決しようとする気がないのか、それとも任命権を持つ張徳江にやる気がなかったのか、どちらが原因かで、この調査チームの「レベルの低さ」の意味も変わってくるでしょうが、そこを判断する材料は今のところありません。
それにしても、「党と国家の指導者」の1人である張徳江が、温家宝から直接叱責を受け、温家宝が現地に駆けつけても顔を見せないだけではなく、その後も一貫して行方不明というのは異常事態です。全責任を張徳江に押し付けて逃げ切るという、まさかのオチが用意されているのでしょうか。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。