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「なぜ列車は止まってくれなかったのか?」息子を烈士に変えたもう一つの高速鉄道事故―中国

2011年08月03日

安全装置不調の中での運行強行。救助作業を早々に打ち切り、事故原因の解明も終わらぬうちの運行再開。高速鉄道追突事故は、中国で人間の命がいかに軽く扱われているかを示すものとなった。

事故から6日が過ぎた29日、大きく報じられることはなかったが、もう一つ、中国の鉄道が人命を軽んじたがゆえに起きた死亡事故があった。2011年8月1日、南方都市報が伝えた。


Beijing 北京 : 30 Sep 2010 / chinnian



■事件の経緯

2011年7月29日午後5時ごろ、広東省広州市増城市新塘鎮白石塘美村火車橋で、一人の男が飛び降り自殺をしようとしていた。火車橋は線路の上にかかる立体橋だ。説得を聞き入れず男は飛び降り、線路に突っ伏した。警官の姚携は、もう一人の同僚とともにすぐに線路に飛び込んだ。

男を抱えて運びだそうとしている最中、深圳発広州行きの高速列車がやって来た。姚携は列車にはねられ、線路脇の柵に頭を強くぶつけた。すぐに病院に運ばれたが、間もなく息を引き取った。姚をひいた列車は速度をまったく緩めることなく、そのまま走り去ったという。


■なぜ列車は止まってくれなかったのか?

人を救うために命を落とした姚携。職務を全うしたとも言える。だが、その両親は、親族たちはどうしても納得できなかった。飛び降り騒ぎが始まってから実際に飛び降りるまでの時間は30分以上もあった。鉄道部局に連絡する時間は十分にあったはずだ。

「なぜ高速列車は止まってくれなかったのか?」

その疑問がみなの胸に重くのしかかっていた。警察、そして鉄道当局にこの疑問をぶつけたというが、返答はないままだ。姚の父親は言う。もし鉄道当局への連絡ミスという過失があったとしたならば、追求しなければならない。だが、もしそうだとしたら、息子は「烈士」に奉じられないのではないか、と。
(烈士とは、革命や公務の為に命を落とした人を顕彰する称号)


■ある官僚の言葉

7月30日、姚が殉職した翌日、増城市公安局、消防局、それに新塘陳政府などの官僚が遺族のもとを訪れた。ある官僚は姚の父親の手を握りながらこう言ったという。

「おめでとう。あなたは優秀な息子さんを育てられた。」

この言葉を聞いて愕然とした父親は半日以上もの間、一言も話すことができず黙りこくっていた。


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