当局が微博に警戒している先月29日に中央宣伝部が列車追突事故の報道を禁止する命令を下しました。香港記者協会が撤回を要求する声明を出しており、微博で噂された禁令が実際のもので、香港紙にも命令が出ていた事もわかりました。この禁令に対し、多くの地方紙が一面に追悼記事を持ってくるなど、公然と反旗を翻しています。

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これほど多くの新聞が、鮮やかに宣伝部の命令に反発した例はちょっと記憶にありません。30日以降、『南方都市報』、『新京報』などを除き、新華社、人民日報などの官製メディアまで一斉に沈黙の時期に入りました。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。
■環球時報の鉄道部批判への反論記事
その沈黙も、さっそく今日破られています。今回も、なぜか環球時報が口火を切る形になりました。
社説「鉄道部の全否定は世論の正義にあらず」(環球時報、2011年8月3日)
7・23列車追突事故以来、鉄道の信用は株式市場で暴落し、ネットでは鉄道への口撃が呼びかけられた。鉄道に関するどのニュースも攻撃しているが、これは理性的な表現ではない。
鉄道部は中国経済と中国社会における特別な作用であり、鉄道部門が本当に衰退すれば、それは中国全体の悲哀でしかない。
読み進めていけば分かりますが、いきなり強力な鉄道部擁護から始まり、鉄道部批判を続けているネット民への反論へと繋がっていきます。
「陳良宇(元上海市党委書記)の件で上海を、成克傑(元広西チワン族自治区主席)の件で広西を否定できないように、劉志軍の件で同様に中国社会における鉄道部門を否定できない」などと、「レッテル張りよくない」とさんざんレッテル張りしてきた分際でネット世論に反論。
お前らが笑っている鉄道部で頑張って働いている人たちは、お前らに同意しないし、中国社会も極端すぎるお前らを笑ってるよ、ていうかお前らの動機なに?という嫌な感じを残したまま社説を締めています。
■「私有化」と「解体」の声を恐れる
気になるのは、世論の要求として紹介されている声の中で、「鉄道の体制を徹底して改革しろ」「高速鉄道を止めろ」といったありがちなものに混じって、「私有化」と「(鉄道部)解体」を挙げている点です。
この辺りの声が思いのほか大きく、また軍部や保守的な人たちにとって、特に私有化の議論が始まるというのは困るといった理由を原動力に、環球時報がネット批判社説を書いたのでしょう。確かに、脊髄反射的にこうしたレッテル張りや、短いフレーズを使って鉄道部批判をする中国人もいます。
しかし、鉄道部の一連の対応に不信感を抱き、あれだけ政府職員に詰め寄っていた楊峰が急に大人しくなったり、どんどん賠償金が上がっていったり、挙句には鉄道部副部長の自己弁護に終始した会見と、叩かれる要素は満載なのに、「批判する方がおかしい」とネット世論をたしなめるでもなく一刀両断する姿勢は疑問です。
■見つからない微博への対処法私はネット、と片付けていますが、列車衝突事故だけでなく最近の流行はやはり微博なのです。ネット、と記事も書いていますが、微博を指すのは間違いありません。
中国公式が微博管理のシグナルを出す(德國之聲、2011年8月3日)CCTV(中国中央放送)のニュース番組『朝聞天下』では、「微博の論理的ボトムラインはどこにあるのか」として、微博でデマを拡散するアカウントがあると批判したところ、「それは当局が世論を先導するために作った団体だろ」と、多くのネット民から反論されています。
日本でも2ちゃんを叩くために、どこかのテレビ局がそれっぽい掲示板画像を作って、すぐに2ちゃんに偽造がばれた事がありましたが、そんな感じなのでしょう。
こうした特集を組むのは、当局が微博に対してこれといった管理方法を見つけておらず、特に今回の列車追突事故で宣伝部に没にされた原稿を微博で流したり、現場の状況が伝えられるなど大きな役割を果たすようになって、脅威を感じているからなのでしょう。あっさりと偽造が見破られるというのも怖いのでしょうね。
新華社の原稿を使えといっても引き下がらず、禁令でようやく大人しくなるというように、記者たちも命令を聞かなくなっている上に、微博がネットの中でも非常に邪魔な存在となりつつある今、そろそろ微博に大弾圧が入るのではないかとも思っています。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。