中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年08月07日
■日本人死者の「記念碑」破壊事件
黒龍江省の事件は最初、頭の弱い集団がノリでやってしまった程度だろうと、タカをくくっていました。そういえば、以前にも同じように頭の弱い奴らが同じような振る舞いをしていた事を思い出しました。
墳墓粉砕!それとも政争?(上) (日々是チナヲチ。、2005年2月4日)
墳墓粉砕!それとも政争?(下) (日々是チナヲチ。、2005年2月4日)
この時に御家人さんが指摘されていたのは、処罰されるか、されるならどの程度か、という点でした。今回の事件については、環球時報が党中央から煽る役目を仰せつかっているかのごとく連日批判的な立場で報道を続けており、彼らを処罰をする気は無いんだなと考えていました。
黒竜江省「日本開拓団」記念碑破壊の5人は賞金2000元(環球時報、2011年8月5日)l
それどころか、記者会見まで開いているではありませんか。「凱」の文字が見えますから、凱旋記者会見とでも謳っているのでしょう。自ら壮士と名乗る厚かましさもさることながら、阜成門という北京市内でも中南海のすぐ西側で記者会見を開ける点に驚きました。
そして、記者会見で「童増」の名前が出たのには更に驚きました。彼は反日一筋の活動家で、日中関係が荒れてくると持てはやされ尖兵としてこき使われたり、マスコミの露出が増えるものの、一旦方針が「友好」に振れるやいなや、途端に消えてしまう可哀想な人であります。
これだけいいように使われているのは、他にやる事がないのか、それなりに庇護者がいて食い扶持だけは確保できているのか、よくわかりません。今日まで生きながらえていたことはわかりましたが。「5人の壮士」(笑)には童増から2000元(約24400円)の賞金が与えられると、5人は話しています。
■連行されるもお咎めなし
そもそもこの事件は最初からおかしいのです。石碑にペンキを塗りかけた写真は、参加者の1人である「湘軍五百」(ハンネ)から提供されており、記事の内容も彼からの提供によるところが大きいのです。
また、現地警察が通報を受けて現場に駆けつけ、連行はされたもののお咎めはなく、4日の夜に無事に北京に戻ってきています。。私が天安門広場の人民英雄記念碑にペンキをぶっかければ、こんなに優しくはないでしょう。
8月6日付環球時報の社説「方正県の『開拓団石碑』を撤去すべき理由」では、石碑建立が「中国社会の基本的な価値観に触れた」と批判。石碑を建立した県に「勇気を持って社会に謝罪し、石碑を取り除くべき」と要求し、建立は明らかに間違いだったとまで言い切っています。また、ペンキをまいた男5人を「壮士」と表記しており、前日の記者会見が仕込みであったことをうかがわせます。
■解体された記念碑
方正県日本開拓団石碑が解体(環球時報、2011年8月6日)
方正県日本開拓団碑解体ネット民が祝福(環球時報、2011年8月6日)
なんと8月6日の朝に石碑が解体されているのが発見され、それを地元住民が爆竹を鳴らして歓迎するという結末に。恐らくは人目につかない時間に、こっそり解体作業を進めたのでしょうが、ご丁寧に横断幕を用意しており、あらかじめ準備してあった感全開であります。
方正県党委書記解任がネットで噂(南方都市報、2011年8月6日)
人民微博--廖新波
同時に県トップである劉軍党委書記の失脚情報が微博で流れており、何らかの処分があったことを匂わせる展開になってきました。発信者が一般人ではなく、「林治波・人民日報甘粛分社社長」や「廖新波・広東省衛生庁副庁長」などの官僚であり、彼らのツイートは「ハルピン市党委常務委員会の決定により、碑の解体を決定した」ともっともらしいつぶやき。マジ?
県党委書記が本当に解任されるとすればそれはそれで問題なのですが、環球時報のしつこい報道に、手際のいい県民。そして久々に表に出てきた童増の名前を見ると、中国はついに反日に舵を切ったという思いを強くしました。
環球時報の報道傾向は確かに東スポのような煽り記事や釣り記事が多いのですが、昨年の尖閣沖漁船特攻事件で、切り込み隊長の役割を割り振られてから、私は環球は単なる反日新聞ではないと考えるようになりました。その環球が水を得た魚のような、怒涛の攻勢。この傾向が今後も続くのでしょうか。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。