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中国初の空母、試験航海に出港=果てしなく遠い空母坂の旅路

2011年08月10日

2011年8月10日、新華社は改装が進められていた空母「ワリャーグ」が試験航海のため出港したと報じた。今回は試験目的のため航海期間はごく短期間にとどまるという。帰港後、ドックでの改装及びテストを続ける予定だという。


■ワリャーグの数奇な運命

ワリャーグは旧ソ連が建造を開始した空母だが、ソ連崩壊後に建造が中止された。兵装などが撤去された後、1998年にマカオの「民間企業」が買収した。海上カジノとして活用するという触れ込みだったが、結局、中国政府の手に移り、中国国産空母開発のための研究材料になったと見られる。ワリャーグで得た情報をもとに、すでに国産空母建造が始まったとも伝えられている。

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*画像は新華社の報道。


数年間大連港に放置された状態が続いたが、その後訓練用空母として使用することが決まり、改修作業が進められてきた。共産党建党90周年の7月1日、建軍節の8月1日に就役するとも噂されてきたが、まだ中国名が決定されていないことから見てもわかるとおり、正式な就役は先となりそうだ。次の節目といえば、10月1日の国慶節だろうか。


■空母デマに踊らされるなよ!By 新華社

10日、新華社は記事「中国改修空母に関する、あれらの誤った情報に警戒せよ」という記事を発表している。中国の空母保有は中国内外の注目を集めてきたテーマ。さまざまな噂、分析が飛び交っているが、それらにダマされるなよ!というのが記事の内容。

「中国になんで空母は必要なの?浪費じゃない?ロシアは空母やめたじゃん」
→ロシアは原潜重視に戦略を変えただけ。空母は実際の戦闘力以上に相手に与える威嚇効果が大きいんです。だからとっても役にたちます。

「威嚇だけなの?領海を侵犯されても手を出さないの?」
→そりゃあるもの使わない手はないわな。

「今の時代、空母って意味あるの?でかいし、ミサイルで一発じゃん。あと空母だけじゃ意味がなくて、護衛する艦艇とかがないと、意味のある『空母戦闘群』とかになんないよね?」
→中国は海、しかも遠洋を守らないとダメだからね。空母がないと困るの。補助艦艇とか含めて、空母はとかく金食い虫で大変だけど、軍事的意味以上に政治的な効果があるし、金がかかっても作らなきゃいけないと中国政府は正しく判断したのです。広い海を持つ中国だけに、空母を含む遠洋艦隊設立は絶対に必要なのです。


■はてしなく遠い空母坂

まとめると、「無駄遣いじゃないよ!遠洋艦隊が欲しいんだよ!政治的な効果もでかいんだよ!」というところだろうか。
とはいえ、対潜水艦能力や遠洋での護衛艦隊が不足していること、なにより艦載機の確保がまだという状況では、「空母だけあってもムダではないか」との声が出ても当然だろう。

艦載機はロシアのSu-33をもとに開発したJ-15が使われる見通しだが、まだ正式配備はされていない。ロシアの正規ライセンスを取得していない「海賊版」だけに、カタログどおりのスペックを発揮できるかは未知数だ。

中国政府、人民解放軍も先が長いことは重々承知で、遠い将来を見据えての取り組みといったところだろう。とはいえ、その間には国際情勢、経済情勢、そして中国国内情勢の大きな変化があることは間違いないように思う。遠洋艦隊整備、空母戦闘群配備という、「はてしなく遠い空母坂」を中国はまだ上り始めたばかりだ。


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