中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年08月10日
*ツクラカン前には雨の中3、4千人の人々が集まり新首相へのエールを贈り続けた。
■8月8日、9時9分9秒
8月8日は8世紀にインドから密教を伝えたとされるパドマサンバヴァの誕生日とされる日で縁起がいい日として選ばれた。とスピーチの中にあった。が、今日サンゲ氏がさらに説明したところでは、法王が9日にヨーロッパツアーに出かけられるというので、その前に間に合わせただけだなんて話も。
ついでに、就任宣言は9時9分9秒というやけに意味ありげな瞬間に始められたが、これについても、最初9・9・9というのは、「中国で長寿とか幸運が長続きするとかいう縁起の良い数字ということなので、中国への友好を示すためにそうしたのだ」という話であったが、今日は一転「私は縁起を担ぐ方ではない。ちょっとした冗談だ」というコメントがでたり。
*現チベットの3賢人。
■前首相サムドン・リンポチェ氏のスピーチ
選挙で圧倒的支持を得て当選し、10年間亡命政府の首相を務めたサムドン・リンポチェはスピーチで
「今日は完全な民主主義への大きなステップが踏み出された日、チベットの歴史上新たなチャプターが開かれた日である」と語り、さらに
「この30年間に渡る、チベット社会を民主主義に導こうというダライ・ラマ法王のビジョンと努力により、法王に依る事のない完全な民主主義がついに達成された。今日と言う日は我々すべてにとって素晴らしい日である」とその喜びを示した。そして、
「私は今ここに260年間伝えられてきた印爾を彼に手渡す。これはガンデン・ポタン政府の下にあるカシャック(大臣室)の正当性を象徴し、7世ダライ・ラマが1751年にカシャックに与えられたものである」という言葉と共に、チベット中央政府の印爾を新首相センゲ氏に手渡した。
「私は16歳の時チベットの政治的権限を名代職であったタダッ・リンポチェから引き継いだ。民主主義が栄える21世紀である今日、チベットの政治的権限を政治リーダー(シキョン)ロブサン・センゲ氏に明渡す」と宣言された。60年間に渡る政治的指導者としての過去を顧みて法王は、
「様々な困難の中で、チベット問題を喚起し続けて来たことは私の小さな貢献と言って良いかもしれない」と語られた。心にその一生を世界の民主主義化促進に捧げることを誓ってきたという法王は
「世界は70億人の民衆に属するものであり、王様や宗教的指導者に属するものではない。同様にチベットはチベットの民衆に属し、数人の王様やラマに属するものではない」と評された。
「自分は今まで民主主義を標榜しながら、少し後ろめたい気持ちでいたが、こうして政治的権限を民主的選挙で選ばれた首相に移譲することで、晴れ晴れとした気持ちになる事ができた」と結ばれた。
「これからは私に頼る事なく、一人一人が政治意識を高め、社会の利害を第一として、チベットの将来に責任を持ってほしい」
「私が今ここにいるのは個人的達成の結果ではなく、チベットと亡命社会の先の世代の人々による努力と犠牲の結果である。私はチベットに自由が取り戻され、ダライ・ラマ法王が祖国に帰還できるまで我々の活動を維持し強化することを誓う」と宣言し、会場から大きな拍手が起こった。法王は新首相に政治的権限を移譲しただけでなく、全てのチベット人に与えられたのだ、と強調し、若い世代のチベット人たちが「立ち上がり、自由に向かって行進すること」を促し、
「チベットの正義が実現されるかそうでないのかは、自分たちの世代に掛かっているのだということを忘れてはならない」と正義への闘いを鼓舞した。
「チベットに『社会主義』は存在せず、あるのは『植民地主義』だ」と中国政府を批判する一方で「中国の友人」に対しては「非暴力と中道政策」を約束し、
「中国政府といつでも対話する用意がある」と述べた。最後にチベット内地の人々に向かって
「チベットの兄弟姉妹よ、私は今日、自信を持って『久しからず我々は再び合う事ができる』とあなたたちに言う」と語りかけた。