2011年8月14日午前10時、大連市人民政府前の人民広場に集まろう。
今、中国のマイクロブログやネット掲示板で、上記の呼びかけが広がっている。大連市のパラキシレン工場移転を目指す「実質的な」抗議集会の呼びかけだ。8日、台風9号による大波で化学工場・大連福佳の防波堤が損傷した。海水が工場敷地内に侵入し、薬品タンク付近にまで迫る事態となった。市街地からわずか20キロに位置する同工場では劇薬のパラキシレンが作られている。もしタンクが倒壊するような事態となれば、その被害は計り知れない。
(参照記事:
化学薬品工場の防波堤が破損、あわや劇薬流出の危機=取材の記者、警官を従業員が暴行)
Dalian Port / dmytrok
■2007年アモイ市から2011年大連市へ
パラキシレン(PX)といえば、中国では2007年に起きた「アモイPX事件」がよく知られている。風光明媚で知られる福建省アモイ市に大型パラキシレン工場が誘致されると知った住民たちが抗議運動を組織。ついには計画を撤回させた。ちなみに同運動では呼びかけの通達に携帯メールが利用され、今のソーシャルメディアのように「携帯が民主主義をもたらす」的な持ち上げられ方をされた。
さて、アモイでは抗議の形態として「散歩」と呼ばれる手法がとられた。デモが禁止されている中国において、「デモじゃないですよ。たまたま散歩していたら、みんなが一つところに集まっちゃっただけなんです」という体を装うというもので、その後も上海市のリニア反対運動でも採用された。
■抗議の「散歩」をしよう
14日もデモではなく、「散歩」を呼びかけるものとなっている。
「10万人が参加するらしい」
「うちのばあちゃんが電話していた。『デモじゃなくて散歩だからね。アモイ市民に学ばなきゃ』と注意していたんだが、年寄りを見くびっていたぜ」
などと、いかにも大事件になりそうな書き込みも見受けられるが、ツイッターやネット掲示板の書き込みを見る限り、そう大きな広がりはないようにも思える。
ちなみに高速鉄道追突事故でも注目を集めたマイクロブログ、ウェイボーでは、社会問題系に強いとされる新浪ウェイボーはすでに検閲されており、「散歩」というキーワードでは検索ができない状態だ。芸能人系に強いとされる騰訊ウェイボーで検索すると、いくつかのつぶやきが確認できるが片手で数えられるほどしかない。検閲をもれたつぶやきだけが表示されているのか、はたまたまったく盛り上がっていないのか。
「自分たちの命と生活を守るため」という明確な目的があるだけに、アモイと同じく大規模な運動になってもおかしくないはずだが、反応の薄さは驚くばかり。果たして明日はどのような「散歩」になるのだろうか?