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魚も家畜も死んでしまった、水はもう飲めない=珠江上流に流れ込んだ「劇薬」六価クロム―雲南省

2011年08月15日

雲南省曲靖市越州鎮のクロム汚染問題が話題となっている。

発端となったのは2011年8月12日付雲南信息報の報道。ネット版は残されていないが、ネット掲示板などに転載された記事を読むことができる。同紙によると、放置された5000トンのクロム・スラグが雨に流され、ダム湖と河川を汚染しているという。
(スラグとは金属を精製した時に生じる鉱物クズ。鉱滓とも)


Mining locomotive / LHOON


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『5000トンの劇毒クロム・スラグがやってきた=羊は死んだ、豚も死んだ、水はもう飲めない』

雲南信息報、2011年8月12日(抄訳)

越州鎮の和平化工有限公司は、アジア最大規模の塩化クロム生産企業。製造時に生じたクロム・スラグ5000トンが放置されている。スラグの1~2%は発がん性のあるクロム酸ナトリウム、0.5~1%は劇薬の六価クロムとみられる。10日に現地を取材したところ、スラグはほとんど残されていなかった。通報があったことを知り、企業が大半を持ち去ったという。現場付近の木々は枯れ、おぞましい色に染まった地面が残されていた。

村民によると、最近は干ばつで雨が降っていないが、ひとたび雨が降ると水溶性のクロムが溶け出し、ダム湖へと流れ込む。すると、湖には死んだ魚が浮かび、水を飲んだ家畜はすぐに死んでしまうという。また、工場所在地の村では2006年以来、37人ががんで死亡している。スラグを撮影していた記者はしばらくすると呼吸に異常を感じ、せきがとまらなくなった。

また和平化工工場の汚水は直接、南盤江に排水されていることも明らかとなった。排出口付近の土はおどろおどろしい色に変わっている。和平化工は農民を雇い排出口付近にイネを植えて汚染を隠しているが、そのイネは明らかに畸形だった。

現地環境保護部局によると、南盤江のクロム濃度はたびたび基準値を超えた数字を記録している。川は青黒く染まっており、肉眼でもその深刻な汚染が確認できる。南盤江は下流で珠江に合流し、広東省、香港、マカオへとつながっている。

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ネット版記事はすぐに削除されたものの、記事はネット掲示板に転載され注目を集めた。曲靖市政府はただちに調査するよう指示、企業と結託し汚染を見逃した官僚を厳正に処分すると表明した。また中央政府の中国水利部は現地に専門家グループを派遣したほか、広東省政府は珠江の水質検査結果を公表し、クロム濃度は基準値以下だと強調した。

昨日(14日)の大連PXデモ(参考記事)もそうだが、環境問題など自らの命や健康、財産にかかわる問題について、中国の人々の権利意識は高まっている。とりわけ大都市部ではその傾向が強い。今回のクロム汚染問題も広州市を中心とした珠江デルタの汚染につながりかねない問題として注目を集めたと言えるだろう。

また越州鎮に限らず、スラグの放置も深刻な問題だ。汚染物質の流出問題や土砂崩れなどの問題が各地で報告されている。日本で注目されているレアアースもそうだが、環境コストをカットしていることが、中国の鉱物資源の「安さ」の一因となっている。


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 コメント一覧 (3)

    • 1. フンガー
    • 2011年08月16日 20:09
    • 日本にも水俣病や大気汚染など公害問題があった。
      いや、今もあり、完全にこの問題が解決したわけではない。

      しかし、日本には公害を社会に対して知らしめ、指弾するマスコミがあった。

      当時のマスコミの報道には多少の誤解、曲解があったが、国民がマスコミの提示する情報によって何が国に起きているのかを知ることができた。

      今の中国にマスコミ、ジャーナリズムが存在するとして、彼らに同じことができるだろうか?

      おそらく出来まい。

    • 2. らんらん
    • 2011年08月18日 20:40
    • マスコミの問題は中国だけじゃないでしょう。

      今の日本のマスコミ、ジャーナリズムが存在するとして、当時の彼らと同じことができるだろうか?

      おそらく出来まい。


      東日本大震災・福島原発事故の一連の報道を見て、既に日本のマスコミ、ジャーナリズムはシニタイ状態と感じます。
    • 3. Chinanews
    • 2011年08月20日 00:30
    • >らんらんさん

      日本のマスコミにも問題はいろいろありますが、中国のように直接取り締まられて、職が奪われる恐れはないというのは大きいかと。問題の質が違うということかもしれません。

      とはいえ、中国の記者の中には頑張っている人も結構いるのがすばらしいです。

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