中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年08月16日
一例を挙げてみましょう。中国のネットの状況について触れた前段部に、中東政変に触発され中国でもデモをと呼びかけた「茉莉花(ジャスミン)革命」が出てくるのですが、当然の如く削除。
『産経新聞』らしく、最後は「ネット民たちは、教科書や戦争ドラマなどを通じて共産党によって叩(たた)きこまれた「日本イメージ」を変えるのか。本書はその展望の一助となる」と締めくくっているのですが、これも「本書はその展望の一助となる」だけが訳されており、他の部分は削除されています。
■日本のコンテンツに心酔しながら、反日を忘れない若者
それ以外の部分はおおむね正確に訳されています。詳しくは元記事を参照していただくとして、概略だけ。本書は時事通信の城山英巳記者が、中国のネットユーザー数が5億人にも達してることに注目。近年流行するマイクロブログ(微博)を通じて、若者の日本に対するイメージを調べあげたものです。
日本のAVやアニメが好きな若者がいることが踏まえ、「微博調査の結果、中国の若者らはジャニーズのアイドルや日本のアニメ・漫画が大好きだが、その一方で南京事件を忘れず、尖閣問題でも断固譲らない。『これはこれ、あれはあれ』という頭脳構造を持つ彼ら彼女らの対日感情は果たして好転するかが、著者の問題意識だ。」とまとめています。
実際、中国人のアニメ好きについては、百元籠羊氏が「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」で、いやと言う程言及しておりますし、蒼井そらが中国語でツイッターにつぶやいて話題になったこと等は、私も記事を提供させていただいている「KINBRICKS NOW」でも何度か言及されております。
■かたよった環球網の書込
この記事を紹介しようと思った理由ですが、ネットユーザーが寄せたコメントの内容が気になったためです。圧倒的多数が日本に対する悪口で占められています。日本は過去の歴史を反省しない、日本のAVは……といった感じで、見るにたえないものとなっています。
コメントを書き込んでいるのは愛国主義的色彩が強い『環球網』の読者。同じネットユーザーと言っても、日本アニメ・ファンとは全く異なる人たちです。ネットユーザーとひとくくりにされたように感じて、反感を覚えたのかもしれません。
ネットの恐いところですが、自分の気に入ったサイトしか訪問せず、自分の思考や好みにあった記事しか読まない人が多いのです。ですので、ある主張が表明されていたとしても、内容を大きく読み違えてしまったり、単なるデマを信用してしまう恐れもあります。
■様々な意見を持つネットユーザー
長くなりましたが、まとめます。『環球網』は平常運行。都合の悪いところは平気で削除する「翻訳」と、日本叩き一色のコメントばかり。こうした意見を持つ中国人がいるのも紛れもない事実ですが、ただ環球網をもって中国人のすべてだととらえるのは間違いです。日本にも、中国や韓国に対してさまざまな意見があるのと同じことなのです。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。