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2011年08月20日
■短期間に異例の鉄道債発行
この鉄道債なのですが、8月8日にも鉄道部は総額200億元(約2390億円)にも達する短期のCPを発行しています。つまり、わずか10日間で2回も鉄道債を連発したわけです。これほどの短期間で鉄道債を連発するというのはきわめて異例です。
鉄道部の資金源は近年、国内での借款や債券でまかなってきました。例えば、昨年の鉄道部の債券発行総額は1750億元だったのですが、今年はすでに昨日の債券発行分までで1400億元(約1兆6800億円)にまでふくれあがっており、1年の半ばすぎにしてすでに昨年の規模の80%にまで到達している状況なのです。
分析筋は、鉄道部は近く償還期限を迎える債券を550億元(約6580億円)抱えており、この550億元分を償還するために新たに債券を発行したのだと指摘しています。もしそうだとすれば、債券を連発しなければ償還分を補えないほど鉄道部の財務状況は逼迫してしまっているということになります。
しかも今回、債券の金利を決定する際に入札募集をかけたところ、当初を上回る金利となってしまいました。この点からも鉄道債に対する一般投資家の熱の冷めようが見て取れます。
ご存知の通り、7月23日に発生した鉄道事故で投資家の鉄道部に対する投資熱は急速にさめています。上海や深センの証券取引市場では鉄道関連株が軒並み値を下げており、鉄道部にとっては厳しい状況がエスカレートしているのです。
■AAA評価への懐疑論
今回の超短期鉄道債発行のニュースを受け、中国国内のメディアは一斉に鉄道部の財務状況について憂慮するとともに、中国の格付け会社大公国際が発表した鉄道部のトリプルAという格付けに疑問を呈する記事を配信しています。
しかし鉄道部は高速鉄道事故発生以来、自身の現在の財務状況についてほとんど外部に公表していません。この面でも隠蔽体質はいまだに鉄道部に残っているといえるでしょう。鉄道部はこの件について、即時皆を満足させられる回答を発表すべきです。鉄道部が破産してしまうという事態に陥れば、中国経済が混乱するのは必至なのですから。
鉄道部の状況についてはこれからも注視していきたいと思います。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。