先日、中国赤十字社の「疑惑のデパート」っぷり、そしてメディアとネット民による激しいバッシングをとりあげた。
(参照:ジャッキー・チェンの寄付金はたった7円?!中国赤十字の情報公開サイトがボロボロだと話題に―中国)中国赤十字問題を盛り上げたのは、なんといっても郭美美問題だろう。「中国赤十字会商業総経理」なる肩書きを持つ、この20歳の女性は、高級車を乗り回し、大豪邸に住むセレブな生活をマイクロブログで「自慢」していた。このアカウントが注目され、「義援金をパクって豪勢な生活をしているのだろう」と疑いの目をかけられることとなった。
(参照:「ミニブログ炎上で中国赤十字窮地に」日経ビジネスオンライン、2011年8月5日)■逸材の「発見」
さて、その郭美美を上回る「逸材」が登場し話題となっている。盧星宇、24歳。中央アフリカ希望プロジェクト執行主席・事務局長の肩書きを持ち、「盧星宇=吸血美人マーメイド」のアカウント名でマイクロブログを開設していた。
*画像は盧星宇のマイクロブログ。「吸血美人マーメイド」というアカウント名はすでに変更されている。
そのアカウントが「発見」されたのはある偶然から。先日、北京市市政府は出稼ぎ農民の子ども向け学校の取り締まりを発表したが、その中に希望工程小学校も含まれていた。関連情報を検索していたネット民が盧星宇アカウントを発見してしまったという次第だ。
■中央アフリカに学校1000校を作る巨大慈善プロジェクト
希望工程とは恵まれない子どもたちのために学校を作ろうと慈善プロジェクト。その中央アフリカ向けプロジェクトでは、15億元(約180億円)を注ぎ込み、1000校を作るという遠大な目標を掲げている。盧星宇はわずか24歳にしてこの一大プロジェクトのトップという地位にいる。
同プロジェクトは中国青少年発展基金会と世界傑出華商協会が共同でスタートさせたものだが、盧星宇の父親・盧俊卿は世界傑出華商協会のトップ。投資企業の理事長でもあり、その資産は1億元(約12億円)を超える。かくして「吸血美人マーメイド」は、金と権力を持った父親を後ろ盾にしたスーパーセレブだと判明したのだった。
18日付新京報には盧星宇のこんな言葉が紹介されている。
私はアフリカに4回行きましたけど、その活動費は全部パパが支払ってくれたもの。寄付金を自分のために使ったことなんてありません。っていうか、私はプロジェクトに最初に寄付した人間ですよ。子どものころから何百人もの人にもらったお年玉が100万元(約1200万円)あったんだけど、全部寄付したの。
■「疑惑」が続出
後はネット民がよってたかっての調査を開始。世界傑出華商協会という、いかにも公益団体然とした組織の正式名称は「世界傑出華商協会有限公司」。法的には純然たる営利企業であるとか(登記地は香港)、「寄付金の10%は管理費として中央アフリカ希望プロジェクトが使用します」という項目が発見されるなど、さまざまな「疑惑」が浮上している。
セレブライフを自慢しまくっていたのが見つかった郭美美とは異なり、盧星宇は世界各地を回っている写真こそ掲載しているものの成金自慢はしていない。だが、同じチャリティー関連のセレブということで、「盧美美」などというあだ名を頂戴し、激しいバッシングの対象となっている。
個人的には、現段階では非合法な問題はまだ明らかになっていないように思う。不信感の固まりとなったネット民、メディアが「疑惑」を量産しているに過ぎないという段階だろうか。強いていえば、いくら金を出しているからといって自分の娘を慈善団体のボスにするのはいかがなものかという倫理的問題だろうか。
もっとも誰しも叩けば誇りがでる身。そのうち、本物の疑惑に引火する可能性も否定できないだろう。