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ド田舎でも高まる環境意識=抗議運動のイロハは住民運動コンサルがもたらす―金ブリ浪人のススメ

2011年08月23日

■山を返せ田んぼを返せ! 江西省環境デモの陰で囁かれる会話■

ブログ「大陸浪人のススメ」と「KINBRICKS NOW」のコラボ企画「金ブリ浪人のススメ」。一つのネタについて、迷路人(安田峰俊)さんとChinanewsが別々に解説してみようという趣旨です。

今回は16日に江西省萍郷市蓮花県で起きた抗議運動について、です。

中国:工場から有害物質流出 住民数千人が抗議-江西省

【上海・隅俊之】中国江西省蓮花県の化学工場から鉛などの有害物質が外部に漏れ出たとして、16日、工場の操業停止を求める住民数千人が抗議行動を行っ た。住民らは鎮圧に当たった武装警察に殴られるなどし、少なくとも20人が負傷したという。香港の人権団体「中国人権民主化運動情報センター」が明らかに した。

20110823_rfi
RFI華語の報道。


■名ばかりの環境保護局は許せない=ネット民の反応

この住民運動について、地元のネット掲示板に書き込まれたやりとりが以下のもの。

【江西省蓮花県の環境保護局は名ばかり。カネだけ取って民生を考えない】
原題「江西蓮花縣環保局,形同虚設,只管收錢,不管民生!」
江西論壇 維権直撃板 ※元スレ、すでに削除?
http://bbs.jxcn.cn/dispbbs.asp?boardid=34&Id=376438


1 名前:名無し人民@江西維権合戦ぽんぽこ 2011-5-5 10:46:00

2011年上半期、江西省蓮花県では環境汚染に対する集団抗議運動が続々と起きている、蓮花大地製薬工場と蓮花隆森鉄ニッケル合金工場は、いずれも現地の庶民のクレームがきわめて多い工場だ。

これらの企業は県の外からやってきて、現地の環境を無視している。状況は日々悪化している。現地の民衆だけが環境問題に声を上げている。

環境局は汚染企業に停業通知書を出すだけで自分たちの職責からは背を向けている。これは行政の深刻な無作為である。県の環境保護部門は、省レベルの環境保護システムに組み込まれてこそ職能を発揮できるだろう。さもなくば、環境保護局とは名ばかりの形だけ、あって無きが如しだ!


2 名前:名無し人民@江西維権合戦ぽんぽこ

>>1に同意するね。
江西省は環境保護(の政策方針)を掲げているならば環境保護部門を再編して、地域の環境保護局の権利を強めるべきだ。省レベルで地域の環境保護局を支持する態勢ができないといけない。こうすることで、汚染企業に対して敢えて処罰を下すことができる。汚染企業や県の共産党委員会の書記も、環境問題を重視するようになる。


3 名前:名無し人民@江西維権合戦ぽんぽこ

蓮花県の近年の発展は目覚ましい。しかし、GDPの増加だけにこだわって俺たち蓮花県民の生存環境を顧みないようではダメだ!

官僚サマは(経済発展という)成績を挙げて、栄転して現地を去っていく。だが、庶民はどこに出稼ぎに行っても、最後には故郷に帰ってくるんだ。

蓮花県の幹部は、現状が将来にもたらす結果についてよく考えてほしい!さもなくば、県の子々孫々に災いをもたらすだろう。


4 名前:名無し人民@江西維権合戦ぽんぽこ

そうだよ。外から企業がやってくるまでは、河の水だってきれいだった。いまは河のどこを見ても白い泡が立っている。心が痛い。

いわゆる官僚サマの目には。こんな現状が見えないのだろうか。


5 名前:名無し人民@江西維権合戦ぽんぽこ

各地の環境局のなかで、本気で環境を保護しているところはあるのかな。中国全土にいくつある?ってレベルだ。どれも名ばかりで実がないものばかりさ。


6 名前:名無し人民@江西維権合戦ぽんぽこ

>>5
その理由はだな。環境局の人事は県の管轄下にある。仮に環境局長が上層部門の話を聞かなかったり汚染企業に対して厳しい取締りをやったりしたら県のお役所が怒るのさ。それで、まじめな環境局長サンはクビになる。

あとはわかるな?


7 名前:名無し人民@江西維権合戦ぽんぽこ

環境保護問題については、偉い人が特別に重要な基準を指示したりしたときだけ環境保護局は神モードで仕事するよね。


8 名前:名無し人民@江西維権合戦ぽんぽこ

蓮花県では環境汚染に対する集団抗議事件がしばしば起きている!民衆の権利保護意識が向上していることを意味しているのだろう。県と郷の環境保護は不可分の問題だ。経済は健康的に発展するべきだろう。


■住民運動テクの地域差

ド田舎の蓮花県にも環境問題について議論する人がいて、議論する場(=ネット)がある。それも現在の中国の一側面だというのが迷路人さんのご指摘。まさしく同感だ。

一方で、ネットを使うテク、ネット掲示板・マイクロブログ経由で多くの人々に知らせるテクについては、個人差や地域差はまだまだ大きいとも感じる。やはり都市部にはITや住民運動に関する知識を持った人が多いのだ。そうした知識を持つ人がネットやメディアをうまく使って、事件をホットトピックにしてしまえば、「人民に優しい政治」というパフォーマンスのために政府が譲歩する可能性は高くなる。

だがうまく行かなければ、ネットにいくら書き込んでも反応はゼロ。今年5月に
江西省撫州市で起きた連続テロ事件はその典型で、長年、ネット掲示板で問題を訴え続けてきたが、ほとんど注目されることがなかった農民が自爆テロへと行き着いた悲劇だった(参考記事)。


■成長産業:住民運動コンサルに注目せよ!

日本でもさんざん報道されているように、中国の環境汚染、強制土地収用、地方官僚の横暴といった問題は枚挙にいとまがない。住民運動ニーズはあるのだが、それを実践する知識、人材が不足している状況が続いている。となれば、ニーズに応える住民運動コンサルが普及するのも時間の問題だろう。

そんなバカな、と思うかもしれないが、表には出ていないだけで住民運動コンサルはすでに立ち上がりつつある。

2011年6月8日付南方日報は「ネット広告・ネットサクラ企業55サイトが閉鎖に」という記事を掲載したが、閉鎖されたサイトには「負の情報を掲載することで恐喝する、いわゆる権利擁護サイト」も含まれている。こうした権利擁護サイトについてはちょくちょく報道されているが、企業や地方政府と戦うために掲示板スレ立て、拡散、コメント付けを
ネット広告企業に依頼するケースも少なくないようだ。また「福建省ネットユーザー書き込み事件」では、娘が殺害されたと訴える女性のためにネットユーザーが掲示板スレ立てを代行。見事、ホットトピックとすることに成功した。

また、環境問題ではないが、「医療ミスだと騒いで病院から賠償金をせしめる仲介業者」(参照記事)の存在はよく知られるところ。住民運動コンサル、住民運動支援者、扇動者、人権活動家……どんな名前が付けられるかはわからないが、今後、中国の住民運動が激化することは間違いないだけに、多くの人間がこの「仕事」につくことは間違いないだろう。

さて、中国の歴史に詳しい人ならば、「ネット広告企業」「医療ミス問題仲介業者」、そして「住民運動コンサル」という話を見て、ぴんと来るものがあるのではないだろうか。そう、古代中国に存在した「訟師」にそっくりなのだ。
簡単にいうと、訟師とは裁判の手続きを代行する職業。こんな輩が跋扈しては訴訟件数が増えて困ると政府は禁止していたが、需要あるところに供給あり、訟師が消えることはなかった。

この
訟師の担い手となったのは科挙に失敗した落第生であった。今、中国にはネットに親しみ、大学で高等教育を受けたのに仕事が見つからない人間がごまんといる。彼らがやがて現代の訟師、住民運動コンサルを担っていくのではないかと妄想している。

*ネット掲示板引用部分は「大陸浪人のススメ」管理人・迷路人が担当。解説部分はChinanewsが担当しました。迷路人版解説は「大陸浪人のススメ」でお読みください。
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