■菅首相退陣表明についての中国の報道■1週間ぶりの更新になります。この間、何をしていたかというと、久しぶりに中国に行っておりました。帰国後、久しぶりに日本のニュースを見ると、たった1週間でいろいろなことがおこったものだと、情勢の変化の速さを改めて実感させられた次第です。
そんな中、中国でも放送されたいたのが、菅首相の退陣表明です。これについての中国での見方ですが、1年程度で首相がかわる短命内閣が続いていることに言及した記事が大半です。この観点が如何にも中国的でおもしろく思ったので、これについて少し。

Naoto Kan at the 37th G8 Summit in Deauville 052.jpg / Guillaume Paumier
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。
■短命内閣となってしまう要因
短命内閣が続く要因について、京報網はねじれ国会に注目しています。「参議院及び参議員議員は首相の解散権の制約を受けず、日本政治の”暴走”の大きな要因となっている」と参議院特有の問題に言及しています。
新浪網の特集では4つの要因を挙げています。
(1)利益均衡
日本の政治は一種の協商政治である。首相とは最も能力、権力がある者ではなく、派閥の利益を調整した「産物」に過ぎない。
(2)民主制度の俗化
民衆のことを考えず、自分のことしか考えない政党。参議院が法案を通さないため、衆議院で強硬採決を図るしかない。
(3)派閥政治
政官財のトライアングルが結成されている。政党間の争いだけでなく、政党内の政治的争いも全て国民の目に見えない密室での協議により決定されてしまう。
(4)社会との乖離
政党が提出するものが現実と乖離しているため、思想的問題も含み反対・賛成を生む。そうなると特に反対の勢いが強くなる。
■環球網「改革を行う能力のある政治家がいない」
環球網では「“换首相连续剧”引人发笑和深思」(“首相の連続交代劇”見る者の笑い誘うとともに深く考えさせられる)という社説を掲載しておりました。ここでも「7年で6人も首相がかわるということはギネス記録といっても良い」という前書きからはじまります。
社説の要点はというと、「日本政治は派閥が乱立している。民主党に政治改革を期待したが、結局、これまでと大した変わりがない状態で、自民党の派閥が増えたようなものだ。抜本的な改革を行う能力を有する政治家がいないため、小手先の改革はできても抜本的な改革はできなかった」というもの。
「歴史問題で謝罪ができないように、自らを省み改善する力がない」というように、歴史問題まで付け加えているのがいかにも環球網らしいところです。そして、日本は民主主義の欠点も教えてくれたと嫌みを言っているところもまさに環球網節です。裏返せば、西側諸国からの中国政治体制批判を実はかなり気にしていたということがわかるものでもありますが。
■求められる「強い首相」
最後にもう1つ、いかにも中国らしいエピソードを紹介しましょう。菅首相があまりに早く退陣しすぎたため、アメリカはもとより、中国にも訪問していないじゃないか、と指摘した記事が複数ありました(「
菅直人下午将宣布辞职 日本下周二决定新首相」や「
日本政坛走马灯5年6换相 新首相也难逃“短命”」等)。言われるまで気がつきませんでしたが、なるほど、首脳外交を重要視する中国らしい指摘かと思います。
中国に指摘されるまでもなく、日本政治が機能不全を起こしているのは確かでしょう。小泉首相待望論がいまだに根強いことからもわかるとおり、リーダーシップのある首相を求める声が強いのに、現実はその逆。首相が指導力を発揮できない状況が続いています。ポスト菅の候補者も、あまり期待が持てない面々です。
リーダーシップという点に限れば、一党独裁の中国に勝る国はないでしょうが、日本に中国的リーダーシップの基準を当てはめられても困るとしか言いようがありません。ただ、他の点に関してはかなり正確に分析しているのではないでしょうか?日本の厳しい現状を指摘され、頭を抱えたくなります。
できれば、その正確な分析力を自国理解にも生かして、報道して欲しいものです。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。