2011年8月29日、菅直人代表の辞任に伴う民主党代表選が行われ、野田佳彦財務相が新代表に選出された。30日に首相指名選挙が行われ、新首相が誕生する。
■中国メディアの読み間違え
27日告示、29日投票というスピード決戦。そして5人の候補者が立つ乱戦ということもあって、勝負の行方が読みづらい選挙ではあったが、中国メディアは小沢一郎元代表の支持をとりつけた海江田万里経産相が有利との読みで、最有力候補と評していた。
27日付中国新聞網にいたっては、「
日本『準首相』海江田は対中友好派=民主党内でも中国通として知られる」とのタイトルで、海江田経産相がほぼ当確という「限りなく誤報に近い記事」を配信している。
*画像は人民網の「菅直人辞任」特集ページ。
中国メディアの「海江田推し」はたんなる読み間違えという以上に願望の反映された結果だった。海江田経産相に並ぶ有力候補とされていた前原誠司前外相、野田佳彦財務相はともに中国が忌み嫌う「タカ派」。「親中派の海江田万里経産相が勝ってくれたらいいのに……」という期待込みでの報道だったのではないか。
■軍人家族出身の新首相
さて、野田財務相勝利を受けて中国メディアはどのような報道をしているののか。人民網の記事「野田内閣の先行きは暗い=対中姿勢はおそらくやや強硬派」では、野田新代表に厳しい見方を示す香港・フェニックステレビのコメンテーター、鄭浩氏のインタビューを掲載している。
野田財務相の人となりについては、
野田佳彦は軍人の家庭に生まれた。父親は陸自の最精鋭部隊・第一空挺団に所属した自衛官だった。野田は千葉県船橋市の自衛隊家族寮で育っている。野田は絶対的な反中派ではないにせよ、その政治思想、対中政策は保守的傾向がある。
野田は釣魚島(尖閣諸島)問題においても保守の立場にたち、かつては釣魚島を日本領土であると国会で決議しようと呼びかけたこともある。
という描写。隣国の新首相誕生にもかかわらず、歓迎ムードはない。新華社の記事「
野田佳彦が日本の新首相に=軍人家族出身の強硬派」でもやはり父親が自衛官であることがクローズアップされた。また領土問題での強硬派、集団的自衛権積極運用派、そして「A級戦犯は戦争犯罪者ではない」発言も紹介されている。
■歓迎ムード・ゼロの中国官制メディアここまで見てきたように、中国メディアに歓迎ムードはゼロというのが印象だ。小泉内閣時代の関係冷却を反省し、その後は安倍晋三元首相、麻生太郎元首相など中国側が歓迎できない首相でもまずは友好的ムードで迎えようとの雰囲気が漂っていた。その意味では野田財務相に対する冷淡な態度は異例と言えそうだ。あるいは30日の首相選出後は頑張って歓迎ムードを演出するのだろうか。
一つ気になっているのは、もし「意中の人」海江田経産相が当選していたら、中国官制メディアはどのように報じていたかという点。だいぶ雰囲気が違うものだったには違いないのだが……。もし予定稿が準備済みだったのならば、ぜひとも見せていただきたいところだ。
日中友好のためにはむしろ対中強硬派の方が友好が進む