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アキノ比大統領、初の訪中=中国官制メディアは「バッシングアンケート」でお出迎え―政治学で読む中国

2011年08月31日

■フィリピン大統領の訪中■

フィリピンのアキノ大統領が8月30日から9月3日までの予定で中国を公式訪問します。アキノ大統領の就任から1年余り、はじめての訪中となります。この訪中について環球網が興味深いアンケートを実施していたのでご紹介します。
(参照:アンケートを受けての記事。「中国网民就阿基诺访华对菲提四大不满 南海问题居首」(中国ネット民、アキノ訪中に際して4つの不満を提出=南シナ海問題がトップに)環球網、2011年8月30日)

100名以上の実業家を引き連れての訪中ということことからもわかるとおり、フィリピン側の目的は中国との経済関係強化です。中国首脳との会談以外にも、中国実業家との会談などがセッテイングされているとのこと。その力の入れようがうかがえます。


Discussing Flight Operations / U.S. Embassy, Manila Philippines

*左:ベニグノ・アキノ大統領。

*当記事はブログ「
政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。


■フィリピン政府に対する不満はなんですか?

アンケートは「フィリピン大統領がまもなく訪中。あなたがフィリピン政府に対して最も不満に思っていることはなんですか?」というテーマで実施されています。回答項目は以下の5項目です。

(1)南シナ海問題で火遊びをして、小国の身で大国を侮り、中国の領土主権に挑戦したこと
(2)米国と合同軍事演習を実施。仲間と結託して地域内緊張のムードを作り上げた
(3)反中言論を野放しにし、フィリピン国内の民族主義の増長を見過ごしにした
(4)マニラバスジャック事件から1年あまり。あいまいな態度で、謝罪も賠償もしない
(5)その他

このアンケートを実施したのは、愛国主義者の集 まる『環球網』。なので結果は見る前からだいたい予想がつきます。本記事執筆時点でおよそ1万人が回答していましたが、6割以上の回答が集中してトップとなったのが1番の南沙諸島を巡る領土問題です。

アンケート告知記事に掲載されたコメントも紹介されていますが、これがなかなか秀逸です。「(フィリピンが)南シナ海の問題で火遊びをして、小(フィリピン)が大(中国)を欺いて、中国領土の主 権を挑発しているのが不満」というもの(アンケート回答項目の文章、そのまんまですが……)。

「小が大を欺く。こんな道理があるか、大統領はどう答えるのか」「南 シナ海で戦いが起きれば米国が必ず助けてくれる。フィリピン大統領はそう確信していているのか」といった意見が並びます。


■昨夏のマニラバスジャック事件で残る遺恨


アンケートの2位となったのが、選択肢2番のアメリカとの合同演習です。「 フィリピンとアメリカの同盟の正義について、アキノ大統領がもう一度真剣に考え、中国に対する敵意と抑止的行動を減らすことを望む」といった意見が寄せられています。

3位が選択肢4番のマニラ・バスジャック事件です。2010年8月に起きたこの事件では、元警察官が香港人観光客のツアーバスを襲い、人質にとりました。警察が強行突入しますが、不手際で人質8人が死亡する惨事となりました。事件後、香港では8万人が参加する抗議デモが開かれるなど、大きな波紋を呼び起こしています。
(関連記事:「<続報><バスジャック>フィリピン警察の不手際、不謹慎な態度に香港市民の怒りが爆発」KINBRICKS NOW、2010年8月26日)

この問題については次のようなコメントが寄せられています。日本人にとっては、かなりなじみのある内容ではないでしょうか。

事件から1周年の記念日。アキノ大統領は再び、事件については謝罪しないと発言した。1人の「正常ならざる射手」によって引き起こされた事件であり、フィリピン政府には責任はないと述べている。だが、この大統領発言は生存者と遺族の傷口に塩を塗るようなものだ。国際的道義と誠意のかけらさえもないのであれば、中国とフィリピンの両国が協力について話しあうようなことなどあるのだろうか?


■「マニラは中国の田舎町のようだ」


領土問題とそれに関連するアメリカの関与が最大の関心事となっているようです。ただ、気になったのがところどころにフィリピンを明らかに馬鹿にしたようなコメントがあることです。

先に紹介したコメントにもそうした感情はありましたが、他にも「フィリピンに何度か行ったことがあるが、夜中、マニラ空港に到着するともう真っ暗。まるで中国の田舎町のようだ」といった書き込みもありました。かつての日本もそういう部分はあったように思いますが、どうも自国の経済がうまくいっていると、そうではない国を馬鹿にするような傾向が生まれるのではないでしょうか。


■他国の人々は中国をどう見ているのか?気になる自国のイメージ

それ以外で気になった点ですが、フィリピンの反中華的雰囲気を不満に思っている書き込みです。「毎回フィリピンに行く度に中国人に対する敵意を感じる。工場主は中国の商品がスーパーの売り場を占めていることを責め、普通の人は中国系がいい仕事を奪っていくと思っている。歓迎されるのは、たんに金を消費する旅行客だけだ。アキノ大統領にも中国人の血が流れているのなら、フィリピンにおける中国人の地位を改善すべきだ」という書き込みがありました。

これもかつての日本と似た面があるように思いますが、相手をバカにする一方で、嫌われることを恐れる傾向もあるようです。自分達は悪いことをしているわけではない、正当に貿易しているだけなのに、なぜ批判されなければならないのか、といった感情でしょう。

こうした意見は当時日本でも散々聞かれたものです。中国はバブル経済を繰り返しているのでは、などと言われたりすることもありますが、たんにそういった経済面だけではなく、いろいろな面で、中国はかつて日本が歩んだ道をたどっているのではないか。このアンケートからそういう印象を覚え、興味深く感じました。

*当記事はブログ「
政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。

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