中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年09月02日
外交が専門らしい曲星・中国国際問題研究所長も、「中国の外交政策が更に透明化した現われだ」と絶賛。いやいや、お前記者会見出たことないやろ。私もないですけど。いつも外交部公式サイトのテキスト起こしに頼っているのですが、これがまあ本当に回答がハンで押したように画一的なのです。
■一方的な情報発信窓口
金正日が明らかに国内に入っていても「情報は入っていない」とあくまでシラを切り通し、海外でテロが起きたり、サイトが中国からハッキングされたりすれば「我々も被害者だ」と言ってのけ、あまり突っ込んで答えたくない時は「報道を注視している」「関係部門に聞いてください」としらんぷり。
これらの切り替えし常套句やスルー力の高さを知ることは中国の理解を深めることにはつながりそうですが、中国外交の理解には役立ちません。リアル新聞聯播が見られると思えば良いのでしょうか。
ちなみに、今でこそ各省庁に設置されている報道官ですが、以前は外交部にしかありませんでした。現在でも他省庁報道官はほとんど知られていないのに、外交部報道官だけは有名です。中国唯一の情報発信地点としての意味はまだ残されているのかもしれません。ただし、上述したとおり、中国側が一方的に情報を流すだけで、双方向のやり取りをする場としては機能していないように思います。
■報道官の地位は高くない
報道官を担当するのは局長と副局長。日本では大臣が自ら、欧米では次官級が報道官を務めるのに比べると地位は高くありません。
記者会見が面白くなさそうに感じるのは、彼らの地位の低さもあるのでしょう。変なアドリブを入れたり、名言を生み出したりすれば、あっという間に表舞台から去ることになります。先日は中国鉄道部の報道官が解任されました。もっとも外交部報道官が失言で解任されたことはないようですが。
■たまには口が滑ることも
彼らも人間ですから、時に声を荒げて思わず失言めいたものを口にしてしまう事もあります。最近だと、今年3月が印象的です。ネットに中国ジャスミン革命の呼びかけが登場。外国人記者が集合場所を取材中、警察に拘束される事件が起こりました。
直後の記者会見は大荒れ。「取材はどの法律に違反していたのか」と詰め寄る記者に対し、お当番だった姜瑜は「法律を口実にする必要は無い」と、法治を無視する堂々の発言をやってのけています。
(関連記事:「<中国ジャスミン革命>海外メディアにビザ発給停止の脅し=なりふり構わぬ中国政府―中国コラム 」: KINBRICKS NOW、2011年3月5日)
彼女が何ら処分を受けていないので、中共としてはこれはノーカン、あるいは失言の部類には入らないでしょう。ただし、外国人記者はそう簡単には引き下がらず、通常20分程度の記者会見がえんえん1時間半近く続きました。相当盛り上がったのでしょう。
ただ、面白いだけで身になる情報が得られたわけではないので、ヲチ対象としては面白くても、記者としては何も情報を取れない時間だけ浪費する会見なのではないでしょうか。
■回数が増えた分さらに薄味?
現在は先に挙げた馬局長と姜瑜、洪磊という男性の副局長の3人で、1ヶ月交代で回しているのが現状ですが、「毎日やってりゃ1日ごとの質問数は減るからいけるだろう」という理由で、しばらくの間は報道官は増やさないそうなのです(9月1日に突然の増員発表。4人体制となりました。新京報)。
まあ、報道官が何人だろうと、記者会見が何回だろうと、彼らの役目が「党の喉と舌」である限り、中身は変わらないだろうなとは思いますが。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。