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【海底油田流出】「我々は君たちを騙した」発言は捏造か?悪者にされた米企業―政治学で読む中国

2011年09月04日

■海上油田油漏れ封鎖失敗■

今回の記事は7月1日に発表した「中国最大の海上油田で油漏れ事故発生」の続報となります。当時の報道ではたいしたことがないという雰囲気でしたが、2010年のメキシコ湾原油流出事故でもあれだけ苦労したのだから、そんなに簡単に解決するはずがないのではないかとの私見を述べさせていただきました。

あれから2カ月、案の定といいましょうか、いまだに解決できていません。事件をめぐっては、いろいろと興味深いやりとりがありましたのでご紹介します。

20110904_oil
人民網の報道。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。



■「我々は君たちを騙したのだ」


中国政府はコノコフィリップスに対し、8月末までに漏出地点を特定すること、そして漏出を完全に封鎖することを命じました(中国新聞網)。8月31日、米石油会社コノコフィリップスは中国国家海洋局に最終報告を提出。封鎖は完全に成功したと主張しています。

ところが、中国中央電視台(CCTV)によると、9月2日時点でまだ油の漂流物が存在しており、20隻もの船による除去作業が実施されていました。コノコフィリップスに取材したところ、油の回収作業が遅れただけ。現在も漂流物の捜索、回収を続けているとの回答でした。
(ソース:「蓬莱油田未完成封堵溢油 康菲回应:我们就是骗你的」人民網、2011年9月3日)

8月31日までに完全に終了したのではなかったのかと問い詰めると、コノコフィリップス側担当者はが「我々は君たちを騙したのだ、騙したのだ」と回答したとのこと。この回答がテレビで放送され、大問題となりました。


■当局の対応

中国中国海洋環境監視観測船隊(海監)北海総隊副総隊長は、コノコフィリップスの態度は不誠実であり、油除去作業も終了していないなど対応も十全ではないと批判。監視活動は停止すべきではないという見解を発表しました。最終的に漏出はまだストップしていないとして、国家海洋局はコノコフィリップスに生産停止を命じました。この油田は中国最大級の油田ですので、今後、中国のエネルギー政策に与える影響は甚大でしょう。


■コノコフィリップスだけが悪いのか?

コノコフィリップスばかりが叩かれていますが、それはフェアなのかという疑問があります。

採掘作業を実施しているのがコノコフィリップス(の中国現地法人)であるとはいえ、国有企業・中国海洋石油との合弁企業の油田開発事業です。資本関係では中国海洋石油が51%を所有していますので、中国側にも責任がないとは言い切れないはずです。しかし、中国の報道は、コノコフィリップス叩き一色という印象です。(中国新聞網

上記「騙した」発言の報道後、コノコフィリップスも問題発言をした社員はいないと反発しています。当時、同海域には多くの船が集まり、1000人もの人間がいた、その誰もが無線で回答することができたはずだと指摘。テレビで放映された発言の声も、取材に答えていた船員の声とは違うと主張し、CCTV報道は誤報だとして訂正を求めています。

今回の事件、両者の主張が入り乱れ、何が真実か見えにくい状況ですが、一つだけはっきりとわかることがあります。外国企業が悪者にされるというのはよくあるパターン。コノコフィリップスへのバッシングも、典型的なチャイナ・リスクの一つでしょう。


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*当記事はブログ「
政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。


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