中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年09月06日
宿泊場所だけではなく、シャワーや、水、お茶の提供もあったとのこと。簡単に説明すると、センター試験に似た全国統一試験の成績をにらみつつ、少しでも良い大学に入学しようとすると、必ずしも近場の大学に入れるとは限りません。一言に遠隔地と行っても、広い中国だけに相当な移動距離となります。子どもにとっては初めての大旅行というケースもあるでしょうし、面倒な入学手続きもありますので、親がついてくるケースも少なくありません。
付き添いの保護者が全員、ホテルに泊まれれば問題はないのでしょうが、ホテルもすぐに埋まってしまいますし、そんなお金は払えないという人もいるでしょう。この記事のすごいところは、大学側が「貧困」新入生の親のために提供と明記してあるところです。体育館での雑魚寝を選択する人は貧しい家庭が多いのでしょうが、そのあたりをさらっと明記してしまうのは中国らしいのではないでしょうか。
■幼稚園の制服購入
もう1つのニュースは、広東省広州市の西村幼稚園が新園児に27着もの制服を購入するよう求めたという話。合計で1000元(約1万2000円)が必要になるとのことで、いくら何でも高すぎるのではないか、形を変えた保育費徴収ではないかと話題になりました(北京晨報)。
内訳は、夏服上着4着、夏のショート・パンツ4着、春の半袖3着、春の八分ズボン3着、春秋共通服2着、秋に中に着る服3着、秋の長ズボンの3着、秋のベスト1着、冬の綿入れ2着、上着2着の計27着。このほかにかばん1個も含まれます。
日本円にしておよそ12000円の出費程度ですが、中国の1人当たりのGDPは日本の1/10ですので、かなりの出費と言えるでしょう。やれ文具だ、やれ制服だとさまざまな名目で金をとられると記事も批判的な論調です。学校側は取材に答え、制服はあくまで「勧めている」に過ぎず強制ではない。皆と同じ服を着れば団体意識も強まるし、まとめて買えば安くなる。それに初年度に買えば、来年は買う必要がないと反論しています。
ニュースになるような話かと思うかも知れませんが、伏線があります。中国の学校では「雑費」という名目で正規の学費以外にお金を徴収したり、あるいは補習授業を実施するとの名目で金をとったりすることが横行。金儲け主義ではないかとの批判を集めてきました。それどころか、他地域の災害復興支援のために生徒から集めた寄付金をピンハネするというひどい話まであったとか。
こういう事情があるので、金の面で学校はあまり信頼されていないのです。今回の記事でも、制服の代金をピンハネしていない、全て業者に支払われると学校側がわざわざ断っています。正規の授業料以外は徴収してはならないと当局からお達しがでているのですが、状況はなかなか変わらないようです。
次々と新しい名目を作ってはお金を徴収する学校。「上に政策があれば下には対策がある」という風土を持つ中国らしい状況です。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。