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中国最大の図書展示会・北京ブックフェアに行ってきた=コスプレ、マンガの存在感―北京文芸日記

2011年09月09日

■北京ブックフェアに行って参りまして■

北京ブックフェアとは中国最大の図書・雑誌展示会。地元、海外から出版社、著作権エージェントなどが出展、一般消費者を含め12万を超える来場者が集まる。

第18届北京国際図書博覧会(公式サイト)

北京国際ブック・フェア(アースナビ)

CREEK & RIVER SHANGHAIの出展する『北京ブックフェア2011』 8/31(水)より開催(asahi.com、2011年8月30日
 
 第18回北京国際図書博覧会が閉幕 (中国国際放送局、2011年9月5日)

8月31日から9月4日の開催期間のうち、一般人が入場できるのは土日の2日間だけ。平日3日間は何をするのかと言うと、業界関係者が各出版社のブースで版権売買の商談が行われる。

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本当なら盛況が見込まれる平日に行きたかったのだが、関係者以外入場禁止なので、もはや祭りの後でしかない土曜日にしか行けなかった。平日に入場できていたら講談社の重大発表を間近で聞けただろうに。残念。

*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。


入館自体は拍子抜けするほどあっさりしていた。念のため持ってきたパスポートを出す必要もない。入館してすぐ、日本が主催しているイベントでもないのにロビーにサクラ大戦のBGMがかかっているのは何故なんだろう?と不思議に思ったが、この疑問は1時間後に氷解する。


■日本の出版社ブース
 
会場は出版社の種類によって東館と西館に分かれていたが、とりあえず東館にある海外出版社の展示場に行くことにした。

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日本のコーナーは講談社や小学館のブースが面積を大きく占めており、その他にはメディアファクトリーやディスカヴァー・トゥエンティワン、昭文社、東方書店など様々な出版社が3畳ほどの正方形のブースに本を陳列している。

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日本からは100社以上の出版社が出展すると事前に聞いていたが、実際は同じブースに共同で展示していた出版社が多数あったとは言え、その1/3程度しかなさそうに見えた。
 
 日本の出版社の方に話を聞いてみると、陳列している本を売ることはできないとのこと。そして版権の商談期間は既に過ぎているので、これらの本は一般参加者に向けて並べているだけにすぎないらしい。ただし、期間が過ぎているとは言え版権エージェントや他所の出版社の社員が時々やって来るので、それほど気も抜けないようだ。

良い本があったら大枚はたいて買おうと思ったのに、肩透かしを食らった気分だ。中国のブースでは本を購入できるのだが、一般の本屋で手に入る本をわざわざここで買う必要はない。


■コスプレショー

別館に行く最中にロビーから賑やかな音楽が聞こえたので、イヤな予感を抱きながら観に行く。そしたらやっぱり異変が起こっていた。

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コスプレした女の子がニコ動よろしく『LOVE&JOY』を踊っている。
 
北京ブックフェアは国内外の出版社が集う国際的なイベントなので会場に外国人がいるのは不思議なことではないし、この日は一般開放日だったから子どもの姿があるのもわかる。だが、ときどき見かけるコスプレイヤーは何の因果でいるんだろうか。
 
西館にあったこのブースが北京ブックフェアの理解し難さを表している。

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「中国人民大学臨界動漫協会」
とは、1年に1回人民大学をコミケ会場にするサークルだ。大学のサークルに売れる版権があるのか疑わしいが、おそらくこのブースの両隣にあった北京君之路動漫科技有限公司と北京青青樹動漫科技有限公司の場所を間借りして出展しているのだろう。『天物』というサウンドノベル系ゲームをもらった。


■東野圭吾問題について尋ねてみた

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大きな出版社はブースも大きく目立つが、お目当ての出版社は合同出展ブースの一角にあった。
 
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暇そうにしていた新星出版社の編集に日本人であることを告げ、「東野圭吾はもう中国で本を出さないみたいですね」と話しかけると、「うちが出す『布谷鳥的蛋是誰的』(カッコウの卵は誰のもの)が中国で出る最後の東野作品なんだ」と自慢げに語ってくれた。
(関連記事:「東野圭吾の中国市場撤退問題を考える=海賊版を当然と考える中国の消費者―北京文芸日記 」2011年8月28日)
 
しかし帰宅後中国アマゾンを調べると、2011年5月に出版された『布谷鳥的蛋是誰的』のあとに南海出版公司から『超殺人事件・推理作家的苦悩』が出ている。それにこの豆瓣の情報だと『カッコウの~』の版権の落札は2010年の5月に終了しているから、本書が最後とは考えられない。

まぁボクの中国語レベルなんてたかが知れているので、単純な聞き間違いの可能性が高いのだが、新星の編集者の言葉を信じてみると、面白い動きが読み取れる。第一財経週刊の記事「瘋狂的推理小説」冒頭には「2011年7月末に『麒麟の翼』と『真夏の方程式』の版権の競売が始まり、新星出版社や新経典文化有限公司などが版権を奪い合うことになる」という記述がある。

結局、新星はこの2冊を落札できなかったのではないか。他社に負けたのか、あるいは7月の段階で東野圭吾は中国への版権供与中止を考えていて競売自体が行われなかったためか。ともあれ、現時点ではこの2冊が中国で出版されることはないと推測できる。


■北京ブックフェア、行くなら初日に


来年の北京ブックフェアは更に多くの出版社が参加し規模も大きくなるだろう。もし行こうと考えた方がいれば、是非とも一般開放初日に行くことをお薦めする。何故なら、最終日は午後になると各出版社が撤収作業を始めてしまうからだ。
 
日本語の本が買えないのは生殺しのように思えるが、陳列されている書籍を手に取って将来その本が中国語に訳されることを考えるだけで楽しい。

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上記写真はブックフェアの一角を占めていた日本語書籍。これらの本が中国の出版社から出ることを切に願う。

*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。


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