2011年9月9日、環球時報にバラク・オバマ米大統領の寄稿文が掲載された。タイトルは「
巴拉克-奥巴马:让我们共同缅怀"9-11"逝者」(バラク・オバマ:我々はともに「9.11」の死者を追悼しよう)。米大使館にも同じ文章が掲載されているが、タイトルは「
我们需要的伙伴关系」(我々が必要としているパートナー関係)となっている。英語版も同じタイトルなので、環球時報のタイトルは中国側が付けたものかもしれない。
この寄稿文を見て思い出したのが、今年4月11日、菅直人前首相によるお礼メッセージ。東日本大震災支援へのお礼メッセージを世界6カ国の新聞に広告として掲載したところ、「なんで台湾にはお礼しないのだ」と日本ネット民から叩かれたというエピソード。
(関連記事:「台湾にお礼しないなんてひどい!」は誤解?!菅首相の感謝状は何が問題だったのか?)
前回は日本が台湾をハブったということで話題になったが、今回は米国が日本をハブるのねと思ったのですが……。
*画像は米国務省国際情報計画局ウェブサイト。オバマ大統領の寄稿文。
■読売読者には届いても、日本人には届いていないオバマのメッセージ
世界で比類ない指導的役割を…オバマ大統領寄稿
オバマ大統領は10日、「不可欠なパートナーシップ」と題して読売新聞に寄稿し、同時テロから10年を機に、「平和と繁栄の未来を求める国や人々には米国というパートナーがいる。米国は経済問題に直面しているが、世界で比類のない指導的役割を今後も果たす」との決意を表明した。大統領は、同時テロ後、米欧とイスラム世界の関係が緊張したことを踏まえ、「米国はイスラムと戦争をしているのではなく、今後も決してしない」と改めて強調した。
日本にも読売新聞に寄稿していました。ですが、ネットではさっぱり話題にならず。というのも、他紙は完全にスルーしているわ、ヨミウリ・オンラインは全文をあげてくれないわ、上述の短い記事をネットにアップしたのも午後7時過ぎてからだわ、という惨状。
オバマのメッセージは読売新聞を読んでいる人にしか届かないわけだが、それでいいのだろうか?
■オバマ寄稿文から見えたこと
4月の菅直人お礼広告(寄稿文ではなく広告だったので金払って載せてもらっている時点でもう、という感じだが)もそうだが、対象国の全新聞に載せられない以上、メッセージが届く範囲は限られている。ネットならば複数のメディアを渡り鳥して読めるが、日本のマスメディアは「いい情報」はネットに出さない方針な上に、他社の記事が注目を集めるようなことには消極的。
というわけで、オバマのメッセージが届く範囲は非常に狭くなってしまった。中国語同様、米政府機関サイトに日本語訳を載せてくれれば、他のメディアも「米政府系サイトによると~」の書き出しでもう少し報道できたように思うのだが。
というわけで、このオバマ寄稿文問題を読んで思ったことを2点。
(1)
日本のマスメディアはせめてタイトルだけでいいからウェブにあげてくれないかな。今の状態だと、「オバマの寄稿文が読売に載った」という事実すら全然わからない。中国在住の知り合いがよく「日本のマスメディアは情報が薄い!」とぷりぷり怒っているが、それは本当に薄いというよりも、ウェブニュースだけを見ていると、突っ込んだ報道の存在に気づかないためだ。最悪、「俺たちはこんないい記事を載せた!読みたければ紙で読め!」という態度でいいので、タイトルだけはウェブにあげて欲しい。
(2)米国は中国政府だけを相手にするのではなく、中国市民を狙った公共外交を展開している。先日のバイデン副大統領訪中では「北京でジャージャー麺を食べる」パフォーマンスを展開、大きな話題となった(
レコードチャイナ)。今回のメッセージでも、在中国米国大使館でちゃんと告知するなどの配慮が見える。日本は盟友だからそんなことはしなくてもいいという判断かもしれないが、
どうも日本が軽んじられているように思えるのだが……。