中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年09月12日
中国初の日系コミック月刊誌 角川、日本から編集者派遣アサヒドットコム、2011年9月5日「新世紀エヴァンゲリオン」のオリジナル版や「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」の中国コミック版を掲載。オンラインゲームのコミック版や現地の人気マンガ家のオリジナル作品も連載する。
角川は日本からベテラン編集者を送り込み、創刊準備を進めてきた。今後も、日本や台湾で培ったノウハウを投入し、作品のアニメ化やゲーム化、キャラクターグッズの販売など様々な事業に取り組むという。
■貞本義行×夏達×姚非拉の座談会
夏達はウルトラジャンプで『誰も知らない~子不語~
』を連載している連載していた中国人漫画家。姚非拉は中国で15年以上漫画を描き続け、夏達も所属しているSummer Zooという漫画家集団(スタジオやプロダクションという認識で良いのだろうか?)を立ち上げた実力者です。
(2011/09/12修正追記:twitterでご指摘を受け調べたところ、『誰も知らない~子不語~ 』は昨年終了しており、現在は同誌で『長歌行』を連載中です。*コミックナタリー)
参考サイト:百度百科・夏達、百度百科・姚非拉
■機動戦士敢達UC
ストーリー:福井晴敏 漫画:顔開文化
原案:矢立肇・富野由悠季
監督:顔開作画担当:陳暉/陳岳
アシスタント:雲峰、晨光、文仲、宅宅、小美、酥餅、刁通、世剛、毛魯、小三
制作:北京顔開文化発展有限公司
(2011/09/12修正:書き漏らしを修正しました。)
タイトルにUNICORNって書かれているってことは、現在ネットで放映しているアニメのコミカライズってことなんでしょうか。作画担当の顔開文化は北京顔開文化有限公司という、漫画やアニメ制作を専門にしている企業です。
参考サイト:顔開の新浪微博ブログ
■涼宮春日的憂鬱
原作:谷川流 人物原案:伊東雑音
漫画:Summer Zoo 監督:姚非拉
(注:本作の漫画担当者は豚宝。Summer Zooは制作会社でした。訂正いたします。2011/09/12)
なんで『涼宮ハルヒの憂鬱』のマンガ版っていつもアレなんでしょうか。ハルヒはともかくキョンが酷すぎる。こんなクオリティで原作付きの漫画を任せるんだったら、「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」みたいなパロディ漫画を自由に描いてもらった方が良かったんじゃないか。それと今更ですけど「いとうのいぢ」の「のいぢ」って「ノイズ」って意味だったんですか。あと「伊藤」じゃなくて「伊東」なの?!
■家宅平安
編絵:APO
コスプレ大好きの女の子が真人間に戻ろうと努力しているのに気になる男の子もコスプレイヤーだった。どうしましょう?ってお話。
天漫の誌上にはどこにも「少年漫画誌」と書いていないので少女漫画風の漫画があっても全然構わないんだが、創刊号だと言うのに雑誌の方向性が見えない。少年少女双方に受け入れられようとしてどちらからも見向きされなくなるんじゃないか。
ただし絵が上手いし話もコミカル。主人公もオタクの癖に前向きで明るい性格なんで少女漫画に漂うありがちな不安感はない。現に主人公は「マジキモイ」って陰口叩かれているのに、次のページでは半年経ってすっかりイメチェンして明るく元気に登校していたりする。
こっからいろんなイケメンレイヤーが出てきて主人公を取り合うのだろうから、バラエティ豊富なキャラをどんどん出してもらいたい。
■初末ONCE AGAIN
脚本:風息神涙
漫画:Buddy
他人の顔にその人物の肩書きや能力しか見えなくなってしまった敏腕サラリーマン。ある日地下鉄で何の文字も浮かべていない『素顔』の女の子を見つけ、心を奪われてしまう。
この画風ってBeLoveとかYOUとかのレディースコミックに寄ってるような……?この雑誌って10~15歳が対象じゃなかったの?子供の頃からいろんな漫画を読むのは良いことですけど……。子供を全く子供扱いしていない広州天聞角川に脱帽。
■花牌綺談
編絵:LiYun
特別協力:冷天
キャラクターの時点で拒絶してしまい全然読んでいない。巫女姿とかチャイナ服とか巨乳とかメガネとかっていうキャラクターを強調する技法は、画力がある程度のレベルに達しているか、ヘタでも良いから絵にそれ相応の個性がないと通用しないんじゃないんでしょうか。ただ、この漫画から花牌の遊び方が学べたら良いなぁって思いました。
■新世紀福音戦士
エヴァは貞本エヴァを中国語にしただけなので特に言うことはありません。写真もなしです。ちなみに、『天漫』に限らず中国の漫画は左から右へとページを読み進める構成になっているのですが、本誌のエヴァだけは日本の漫画と同様に右開きで掲載されています。するとどういうことが起きるのかと言うと、雑誌を普通に読み進めていったら突然エヴァの1話目ラストページになります。
創刊号には以上6作品が掲載されていますが、なんと次号10月号では更に3作品が連載を始めます。その1つ目が中国の各都市を擬人化させたヘタリアみたいな漫画です。
WEB漫画でやれよ!と言えないのが中国の怖いところ。角川は天漫をきっかけに中国でグッズ化やアニメ化を進めていくと言っているので、この漫画をアニメ化させて、その際にはキャラ名と対応する各都市出身の声優を割り当てるんじゃないか。と勘ぐってしまいます。
*一番右のハルピン君がマフラーを巻いているのがベタで良い。
主人公はやはり「北京君」でしょうか。北京と言ったら『あずまんが大王』の中国語版アニメが出た際に、登場人物の一人「大阪」を「北京」に改名して北方の方言を喋らせたところ苦情が来たって話がありますが、この漫画の登場人物はそれぞれの地方の方言を使うんでしょうか。
2つ目の新連載が『提督大人与迷失七海結界』という冒険ファンタジーっぽい漫画。
画像の女の子がたぶん「提督大人」(提督様)で、「様」と言うからにはツンデレなのでしょう。
3つ目が有名なパソコンゲーム『仙剣奇侠伝』のコミカライズです。
なんでいきなり3作品も増えるのでしょうか。9月号の創刊に間に合わなかったのか。創刊してすぐに連載数が増加するなんて一般的なことなのか。それとも、この連載陣じゃマズイと踏んだ出版社が緊急のテコ入れをしたのか。
とにかく、掲載漫画が3つも増えて分厚くなるであろう来月号も値段は12元(約144円)のまま据え置きなのか気になるところです。
■他の漫画雑誌も買ってみた
ここで比較の意味で、天漫とは違って近所で購入できた2冊を紹介してみます。
創刊してまだ1年も経っていないはずの月刊誌・尚漫は1冊9.8元(約118円)で売られています。これは本当に少年向けって感じの漫画誌です。よく必殺技が出てきます。
名前に『COROCORO』と付き、コナンが掲載され、小学館とは協力関係にある龍漫少年星期天(星期天とは中国語で日曜日という意味)は1冊8元(約96円)で月2回刊行されています。
ちなみに連載内容はと言いますと、コナンの他にも御茶漬海苔みたいなホラー漫画があったり、永井豪ばりのバイオレンスモンスター漫画があったり、エロいのがあったりしてかなり『健全』で面白いです。
参考サイト:百度百科・尚漫、百度百科・龍漫COROCORO、公式サイト・龍漫
天漫の進出にこれらライバル雑誌は黙っていないでしょう。彼らの動きにも注目していきたいところです。角川は9月20日には天漫軽小説というライトノベル雑誌を創刊する予定だそうです。日本のライトノベル作品も載るそうなので、内容としてはこの前休刊した『ザ・スニーカー』みたいなものと考えるべきなのでしょうか。
参考サイト:百度百科・天漫軽小説
ただし、あちこちを探し回って手に入れた天漫が期待とは裏腹に内容が正直アレだったので、ライトノベル誌の創刊もそんなに期待できません。まぁボクは国籍・職業・年齢という点で天漫のターゲットから外れているので、何を宣おうが無意味なのですが。
しかし、天漫の創刊号に満足して次号も買おうとしているアニメや漫画が大好きでたまらない中国人がいたら、ボクはきっと彼らを軽蔑するでしょう。
次号はきっと面白いだろう、ちょっと高いけど買ってやっか。と期待と不満を込めて購買する中国人が1人でも多く現れることを。
*当記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の許可を得て転載したものです。