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2011年09月12日
■「沈没船の乗客は50人では収まらない」
現地船主「沈没船の乗客は50人では収まらない」(財新網、2011年9月11日)
転覆した船は幅2メートル、長さ16メートルでの小さなもの。定員は14人ですが、「いつも20~30人は乗せていたし、多いときなら50~60人は乗せてる。これまでなにも問題はなかったよ」と財新網の取材に答えるのは、同業の船主さん。
この数字はもちろん大人のものです。事故直前に目撃したのは「80~90人くらい」で、「子供たちばかりだから当然多くなるわな」と解説。「子供たち50人ならあそこまで船体は沈んでいなかった」と見出しの発言に繋がるわけです。
また、沈没した船の真ん中辺りに乗っていたという曾琴さん(13)も、船内は乗客が多く、超過積載だったという船主の説を補強しています。この小さな船(下記写真)に90人ですか……。
沈没船の乗客は90人以上だったとの指摘(荊州新聞網、2011年9月11日)
目撃者「沈没船に定員倍以上の92名乗船 」(新京報、2011年9月11日)
■揺らぐ当局発表の事故原因
同乗していた小紅ちゃんによると、船内には「定員32人」と書いてあったそうです。前出の曾琴さんは友達と乗客の数を数えたら90人くらいはいたと取材に答えています。前出の「定員14人」は大本営発表なのですが、船の大きさを考えると、14人でも厳しいのではないでしょうか。
彼女たちは、なにかに衝突して船の浸水が始まったと証言しています。公式発表の転覆ではなかったのです。転覆していれば、同級生の男の子に助け出されるひまもなかったでしょう。この証言からもワイヤーに引っかかったという大本営発表が揺らいでいます。当局はなぜワイヤーに引っかかったためと発表したのでしょうか。
■日常化している超過積載文化
日本なら、自動車の定員は大人2人に対し子供3人と換算しますが、これをもってしても定員の倍以上は軽く超えてしまっており、船足も鈍かったのではと思われます。超過積載が衝突を招いた、と考えると筋が通ります。
こんな学校の送迎車(中国青年報、2011年9月9日)
積載500キロのトラックに50人以上の児童をのせて、小学校へ送る途中の1枚。こういうのが常態化しているんでしょうね。
なお、事後処理ですが、温州鉄道追突事故同様、現地担当官僚の首切りと賠償金が焦点。このあたりは様式美でしょうか。首切りですが、副県長、鎮長、市の海事責任者が解任されました。
次に賠償金。国家交通事故規定により14万元(約170万円)の賠償金が支払われるものの、全遺族が賠償金を拒否。遺族はまず学校が事故の責任を負うべきと考えているようです。休日に帰宅する交通費も学校に支払った金に含まれていたのに、こんなザル安全対策で事故を招いてしまったという思いが強いのでしょう。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。