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「毛沢東万歳」が現政権批判につながる可能性=追悼式典参加者拘束事件から考える―山西省

2011年09月13日

2011年9月9日、山西省太原市の迎沢公園で集会を開いていた市民が警察に拘束された。1人が行政拘留5日、主催者が行政拘留7日を命じられている。12日付RFIを参照した。

本サイトでもたびたび取り上げているように、近年、中国では「群衆事件」(中国特有の言葉。デモ、暴動、抗議活動、暴力事件など人が集まって騒ぎとなった事件の総称)では頻発しており、集会を警察が取り締まるのは決して珍しいことではない。今回の事件がちょっと面白いのは、集会が強制土地収用反対など政府批判目的ではなく、「毛沢東逝去35周年追悼式典」が題目だった点にある。

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■毛沢東崇拝サイト・烏有之郷

「烏有之郷」(ユートピア)というサイトがある(ウィキペディア日本語版百度百科)。2003年に設立された政治経済コラム投稿サイトだが、いわゆる「左派」「毛沢東崇拝」の色が強いことで知られる。じゃあ、政府とべったりかというと、そういうわけでもなく「昔の共産党は良かった。なのに今の政府は……。毛沢東の時代に帰れ」というロジックで政府批判に矛が向いたり。2005年には一度、閉鎖されたこともある。

今年、派手なパフォーマンスでなにかと話題の薄熙来重慶市委書記絡みで、「烏有之郷」は注目を集めた。「革命歌キャンペーン」を展開し、「文革の残滓」と温家宝首相に批判された薄熙来だが、今年4月、「烏有之郷」会員を重慶市革命遺跡旅行に招待するというパフォーマンスを見せている。


■なぜ集会参加者が拘束されたのか

今をときめく(?)薄熙来のお墨付きを得た「烏有之郷」の集会がなぜ取り締まられたのか。「烏有之郷」には集会のレポが上がっているが、

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革命歌を歌う
毛主席に献花
各階層代表の演説
毛主席の詩を朗読
毛沢東思想と共産党一党独裁体制の堅持を誓う
インターナショナルを歌う

という和やかな(?)内容。ただ、おそらく集会の許可を取ってなかったのではないだろうか。集会も終盤を迎えたころに警察がやってきて、「解散してくださいよ」「ふざけるな!」で衝突。参加者9人が拘束されたという。他の参加者は「毛主席万歳」を叫びながら、拘束された参加者を解放するよう求めたという。


■「毛主席万歳」「共産党一党独裁を守れ」という危険思想

個人的に興味を持っているのが、「毛主席万歳」「共産党体制を守れ」の思想が政府批判の武器になるという点だ。心の底から毛主席万歳を唱えている人はもちろんのこと、民主化シンパも方便として使える武器となる。

例えば、先日、懲役9カ月の判決を言い渡された王茘蕻さんだが、罪状とされた「裁判所前での騒ぎ」とは横断幕を手にして、インターナショナルを歌うという内容であった。「共産主義万歳!今の政府は正しい社会主義思想に従え!」という名目で戦えば、当局も手を出しにくいという判断があるからだ。
(関連記事:
中国ツイ民の注目集めた裁判=人権活動家・王茘蕻さんの活動と「罪」―中国人権活動家の王茘蕻さんに懲役9カ月の有罪判決=支持者からは批判の声―中国

こうした発想はなにも珍しいものではなく、世界中、古代から続く発想だ。「国王幻想」と呼ばれたりもするが、「王様は悪い人じゃない!今の政治が悪いのは君側の奸や悪代官のせいだ。奴らを倒して、王様の徳のある政治を取り戻そう」という名目で政府と対立するというもの。

今回の一件は、無認可集会の割には人が集まりすぎてしまったというだけかもしれないが、今後、「毛主席万歳」思想が現政権批判を強めていく可能性は十二分に考えられる。将来の政治リスクを考える際に、民主化シンパの動きだけではなく、左派の動きを注視することも必要となるだろう。

*写真は紅色網友の報道。他写真多数。


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