中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年09月13日
「責任ある大国」外交を完徹できなかったのは、反カダフィ側を支援することのリスクが大きかったためだろう。そのリスクとは第一に、リビア以外の中国と友好的な独裁国に「内政不干渉を守る中国は独裁国が何をやっても気にしませんとか言っていたのに、いざとなったら見捨てるのね」というメッセージを発してしまう点。
第二に経済的な損失だ。
■中国の損失、ハウマッチ?
中国がいくらリビアに金を突っ込んでいたのか、その損失額を正確に見積もることは難しい。中国政府の公式統計を見ると、直接投資残高が約4300億元(約5兆1600億円、2009年末)。また8月22日の中国商務部記者会見では、「大型プロジェクト請負契約50件、契約金額188億ドル(約1兆4500億円)」という数字が明らかにされている(財経国家週刊)。
このすべてがご破算になるわけではないが、多くが既存したことは間違いない。リビア内戦勃発後、リビア在住の中国人約3万6000人が脱出した(チャイナネット)。それから半年間、商売は完全にストップしており、ビジネスの損害は計り知れない。住宅建設、道路建設、油田開発などの大型プロジェクト請負も、新政権下で継続されたとしても、また労働者を集めるところからやり直し。資材や建設機械もどさくさでなくなっているものも少なくないはずだ。
■金を取り戻せ!中国の戦いはこれから始まる
12日の新政権承認では、「中国・リビア双方が以前に調印した各種条約、協議が有効に継続され、実行されることを希望する」との文言が盛り込まれた。新政権側からは「各種条約、協議を順守する」との返事がきたというが、この応答だけですべてが丸くおさまるはずはない。
上述したような損害に関して、中国企業が賠償を求める可能性もあろうし、それが新政権との軋轢を生む可能性もある。また、これまでは独裁カダフィとは手を切るという意味で参入できなかった欧米企業が続々と参入することになり、市場を独占していた中国企業は競争にさらされることになる。採掘再開が急ピッチで進められている石油に関しても、他国との奪い合いが始まるだろう。
頭が痛い問題ばかり。リビア内戦は終わりを迎えつつあるが、中国にとっての「リビアでの戦い」はまさに今、始まったばかりなのだ。