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新政権を承認もカダフィ支持を捨てきれず……リビアに対する中国の複雑な感情―翻訳者のつぶやき

2011年09月17日

■中国のリビアに対する複雑な感情■

中国政府は一貫してリビアのカダフィ派寄りの姿勢を見せ、反政府派の国民評議会とは一定の距離を置いてきました。しかし、9月12日、ついに中国外交部は国民評議会を承認する声明を発表しました。

中国中央テレビでは、7月から環球視線などの論評番組で連日、リビア情勢を取り上げてきました。中国メディア、ひいては政府が高い関心を寄せていたことを象徴的に示すものでしょう。8月半ばぐらいまでは一貫してカダフィ擁護の傾向が強く、NATOを含めた西側の空爆現場の「悲惨な」様子を詳細に報道していました。


LIBYA/ / شبكة برق | B.R.Q


それが8月半ばぐらいからは中立的な印象を与える報道へと変わりました。カダフィ側の劣勢を受け、中国政府も「どっちつかず」の態度で様子見していたのでしょう。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやきの許可を得て転載したものです。


■「カッコ」付きで国民評議会を表記

今回の承認は、国民評議会側の勝利が決定的になったことを受けてのものです。ただ、積極的なメッセージというよりは、「しぶしぶ」認めたような印象を受けました。

それは中国本土メディアの報道からもうかがえます。国民評議会の中国語名はいまだに承認前同様、「国家过渡委员会(国家移行委員会)」というカッコつき表記が使われているのです。中国では、政府組織名の「カッコ」付き表記は、政治的な意図によるケースがほとんどです。例えば、台湾政府の組織名は「カッコ」付きで表記されていますし、チベット亡命政府に対しても「カッコ」付きで表記することがあります。

つまり、カッコは「中国政府としては承認していませんよ」というサインでもあるのです。この点から見ても、中国と国民評議会の距離感がわかります。

中国政府は国民評議会を承認する必要がありました。リビアの内戦前、多くの中国国営企業がリビアに進出。住宅や道路などの開発プロジェクトにたずさわったほか、石油など多くの利権に関わってきた経緯があります。内戦勃発後、ほとんどの企業関係者がリビア国外に撤退、中国企業の事業はいわば白紙に戻った状態となりました。

ゆえにリビア利権を守るために新政権との関係構築は急務であったのです。


■カダフィ側への武器提供の発覚

「勝ったほうにつく」というのが中国政府の日和見的方針だったと思われますが、そうは言っていられない問題が起きました。

9月初頭、「中国企業がカダフィ側に武器を提供していた」というスクープ報道があったのです(CNN)。外交部は否定しましたが、このままでいけば国民評議会との関係悪化は必須でした。そこで中国政府が出した答えが「国民評議会の承認」というカードだったのでしょう。
(関連記事:「中国がリビア内戦でありえないぐらい失敗している件=カナダ紙のスクープと中国の弁明」KINBRICKS NOW、2011年9月7日)

承認を発表した外交部報道官は、「中国企業がリビアの復興に携わることを望む」と発言しています。まさに中国政府の本音を代弁した言葉です。もちろん、国内世論を抑える意味でも「共産主義に理解をもつカダフィ氏に勝ってほしい」という別の本音もあります。それが現在も続く「カッコ」表記や先のカダフィ寄りの報道姿勢に現れているのでしょう。

リビアに対する中国の複雑な感情はこれからも続きそうです。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやきの許可を得て転載したものです。


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