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中国の欧州支援、その内幕は狐とタヌキの化かし合い的条件闘争だった―政治学で読む中国

2011年09月18日

■ヨーロッパの債務危機と中国2■

債務危機にあえぐヨーロッパは中国に支援を求めました。中国・ヨーロッパ関係というテーマにおける、極めて重大な出来事だと考えているのですが、日本のマスコミはあまり取り上げていないようです。今回はこのテーマについて。
(前回記事:「ヨーロッパの債務危機と中国」政治学に関係するものらしきもの、2011年9月14日)


Euros / Images_of_Money


最大の関心事は、ヨーロッパの支援要請に中国が応じるかどうかです。中国は大量の米国債を保有していますが、米国債の格付けにより資産価値が毀損してしまったではないかとの批判が国内から上がっていました。欧州の国債のリスクは米国以上ですから、さらに強い批判を浴びることになりかねません。とはいえ、すでに欧州と強い結びつきを持つ中国だけに、むげに断るわけにもいかないでしょう。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。


■「貧しい中国は豊かなヨーロッパを助けるべきか?」


フォーブス中国」に「“穷”中国应该帮助“富”欧洲吗?」(「貧しい」中国は「豊かな」ヨーロッパを助けるべきか?)という記事が掲載されています。同記事は支援すべき理由として、以下5点をあげています。

(1)ヨーロッパは中国の最大の貿易相手国である。

(2)中国はすでに6000億ユーロ(約63兆6000億円)もの欧州債権を保有している。

(3)国債以外にも、多くのユーロ資産を保有している。

(4)中国が保有している3兆2000億ドル(約246兆円)もの米国債資産を分散化する意味でも良い機会だ。

(5)人民元の国際化にも役立つ。

(6)外貨保有高が中国の1/10のブラジルでさえも既に支援を表明している。

■支援と引き替えに提示した中国の条件

結局、中国は支援へと踏み切ったようです。9月14日、温家宝首相は大連・夏季ダボス会議の冒頭演説で、中国もすでに世界経済とは不可分の関係にあると発言、欧州支援を表明しました(中国網)。

ただし、無条件ではありません。温首相はヨーロッパにも譲歩を求め、その例として、中国に「市場経済国」としての地位を認めることをあげました。

「市場経済国」の認定は世界貿易機関(WTO)ルールにおけるダンピング認定に大きな影響を持つもの。「非市場経済国」にアンチダンピング税を課す場合は第三国のコストを基準とすることができます。1993年には中国よりはるかに労働コストが高いシンガポールを参照して、欧州が中国製カラーテレビにダンピング認定を下したこともありました。
(関連記事:「目指すは「市場経済国」」人民中国)

WTO加盟交渉時の取り決めで、2017年までには中国が「市場経済国」認定されることが決まっていますが、現在、貿易摩擦に苦しむ中国にとってその前倒しは大きな意味を持ちます。認定をを数年早める誠意こそが友人の証明だとヨーロッパ側に要求したのです

しかし、社会主義国を標榜し、あれだけの国有企業を有し、計画経済的側面がいまだに色濃い中国が、「市場経済国」を名乗るのはかなり無理があるのではないでしょうか。


■タヌキと狐の化かし合い

New York Timesは、温首相の要求は「中国からの安い輸入品に対する主な法的防御を見直してくれ」ということにほかならないと喝破しています。ですから、ヨーロッパとしても簡単に認められるはずもありません。また、国債購入や融資など支援の規模についても具体的な数字は示されなかったとのこと。これではヨーロッパ側も譲歩できないでしょう。

リスク資産購入への批判もあるため具体的な数字を出しづらかったという事情もあるでしょうが、中国はとりあえず「高い値段」の条件を開示したという段階でしょうか。ヨーロッパ側も簡単には受け入れられませんので、今後は狐とタヌキの化かし合い的条件交渉が続くのでしょう。

化かし合いといってもけっして悪いことではなく、国家間の交渉とはかくあるべきであります。むしろ、日本が化かし合いに加わっていないのが残念なほどです。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。


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