中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年09月19日
■「娯楽番組制限令」発令か?
9月6日付南方週末が「娯楽番組制限令」について詳しく報じている。8月9日と10日の2日間、陝西省西安市で全国ラジオ・映画・テレビ局局長座談会が開催された。座談会の後、全国の娯楽番組に大きな影響が生じたことから、業界では「娯楽番組制限令が発令されたのでは」とささやかれている。
バラエティ番組では中国ナンバーワンの人気を誇る湖南衛星テレビでは、「天天向上」「快楽大本営」の放映が過去の再放送に切り替えられたほか、人気オーディション番組「快楽女声」は生放送時間の長さや規定時間前の放送で警告を受けた。人気ドラマ「新環珠格格」は放映話数を削減するよう求められたという。他局でも、バラエティ番組の放送時間削減、出演予定の香港芸能人の出演取り消しなどの事態が相次いでいる。
■ナゾの規定に踊らされるテレビ局
この「娯楽番組制限令」だが業界内の俗称で、中国国家ラジオ・映画・テレビ総局による娯楽番組関連の通知を総称したものだ。「省級テレビ局によるオーディション番組は年に1番組まで。番組の放送機関は2カ月、計10回を超えてはならない。またゴールデンタイムの放映を禁止知る」「テレビドラマは30話を超えてはならない(四大小説及びその翻案ドラマはのぞく)」など計10カ条の規定があるという。
業界内の噂ではあるが、近年、さらにバラエティ番組に対する通知が増え、現在では16カ条になったという。「午後5時から10時までに放映される娯楽番組は週3回を超えてはならない」「台湾・香港芸能人の出演認可手続きを厳格化する」などが新たな規制だと伝えられている。
■香港・台湾芸能人の受難
当局による明文化された規定ではなく、通達の集合と運用によって娯楽番組規制が強化されたという話なので、あいまいな部分が多い話なのだが、しかしバラエティ番組に強い湖南衛星テレビを中心に影響が出ている。
中国オーディション番組の火付け役となった「快楽女声」(以前の番組名は超級女声)は今年復活、やはり大人気となった。先日、決勝戦が行われ今年の放映は終了したが、男性版の「快楽男声」も含め2012年は一切のオーディション番組を開催しない旨が発表された。
また湖南衛星テレビの人気バラエティ番組「天天向上」の司会者を務めていた香港の芸能人・欧弟氏は不祥事を起こしたわけでもないのに、放映時(再放送と思われる)、顔にモザイクをかけられ、今後の出演は未定だという。台湾・香港芸能人規制にひっかかった可能性がある。この規制は中国中央電視台、または衛星テレビのみに適用されるものらしく、台湾芸能人は続々、地方局に鞍替えしているという(中華娯楽網)。
■民主化対策だけじゃない!健全なメディアを与えてくださるメディア検閲
中国のメディア規制というと、日本に伝えられるのは政府への不満対策や民主化対策が中心だが、実際にはもっといろいろな面で、「健全さ」を担保するメディア規制が実施されている。迷信邪教対策のために日本の「デスノート」が禁止された、あるいは「ハリー・ポッター」が禁止されたこともある。先日は「タイム・トラベル物禁止」というSFファン憤死ものの規制もあったという。
それもこれも人民に健全なメディア空間を提供したいという中国共産党の親心なのだろうが、ネットと海賊版がこれほど普及した今、サブカルとアダルトビデオを求める若者はテレビを見ずにネットに向かい、ついでに民主化関連のウェブページまで読んでしまったりという状況になっている。
ウェブこそが不健全ワールドの入り口なのだ。