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【洛陽性奴隷事件】政府職員の犯罪は「国家機密」なのか?スクープの記者を市政府が脅迫―河南省

2011年09月23日

22日の記事「風俗嬢6人を地下室に監禁、「性の奴隷」としていた男を逮捕」で紹介した「洛陽性奴隷事件」は恐るべき犯罪だった。妻子ある河南省洛陽市技術監督局職員が過去2年間で6人の風俗嬢を誘拐。秘密の地下室に軟禁し「性の奴隷」としていたというもの。誘拐された女性のうち2人は、男に殺害された。

だが、本日伝えられた続報は監禁事件に勝るとも劣らないほどのひどい話となった。記事を書いた南方週末の紀許光記者のもとに「謎の男2人組」が訪ねてきて、「誰が情報提供者か教えろ。おまえは『国家機密』を犯した可能性がある」と脅したのという。もし国家機密侵犯容疑で捜査されれば、何ヶ月も拘束され取り調べを受けたとしても不思議ではない。23日付南方都市報、紀許光記者の新浪ウェイボーを主に参照した。

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*画像は紀記者の新浪ウェイボー・アカウント


■「謎の男」の来訪と夜を徹しての脱出

22日朝の「謎の男」来訪から河南省を脱出するまでのいきさつを、紀記者は自らの新浪ウェイボーで生々しくつづっている。

河南省洛陽市。宿泊していたホテルで「洛陽性奴隷事件」の原稿について、誰が情報提供者かを明かすよう質問された。曰く、私が「国家機密」を侵犯している、と!技術監督局執法大隊幹部の李浩が2年もの間、ホステスを監禁し、性的暴行を加え、2人を殺害したのだ。民衆が知る権利を持つ典型的な刑事事件ではないか。なんの「国家機密」に相当するというのか??市トップの業績に関する「機密」か?状況を見るに私は連れ去られる可能性がある。私の問題に注目して欲しい。助けて欲しい。
9月22日午前11時20分

(謎の男たちは)すでに帰った。しばらくは安全だ。「洛陽性奴隷」の記事だが、取材はきわめて困難だった。当局が情報を独占し洩らさなかったからだ。南方都市報の報道後、他紙の記者とともに取材を求めたが、断られた。情報爆発の時代なのだ。政府はメディアとどう正面から向かい合うか、学ぶべきだ。さもなければさまざまな推測を生むだけだろう。市民の知る権利は官僚の業績よりも重要だ。記者は洪水や猛獣の類ではない。私たちが求めているのは真実だけだ。
9月22日午後11時59分

「洛陽性奴隷事件」が私をこれほどパニックにするとは。夜を徹して河南省を脱出した。迎えに来てくれた妻の弟は包丁を見せ、身の安全を案じていたと言った。さびが浮かんだその「護身具」を見て大笑いした後、私の目からは涙がこぼれそうになった。私の仕事とはこれほどとるにたらないものだったのか。私たちはこんなにも無力だったのか。そう感じた。昨日朝にやってきた人間が口にした「国家機密侵犯」という言葉の前で、このくず鉄は私たちを守る力があるのだろうか。
9月23日午前1時37分


■問題は「メンツ」だった

23日付南方都市報は、紀記者自身による記事が掲載された。「細かい点を見落とさずに冷静かつ客観的に記事を書けばいいと思っていた。市民の知る権利に答えれば十分だと思っていた。だが、私が見逃していたことがある。それはメンツだ」と嘆いた紀記者は脅迫問題の背景を解き明かしている。

「洛陽性奴隷事件」は極秘扱いとされていた。これほどの大事件、本来ならば「警察がんばってます!」と大々的にテレビ番組を作ってもおかしくはないはずだ。だが、警察の幹部にも事件の全貌が知らされないようにするなど、秘密主義が貫かれていたという。事件は6日に解決していたが、南方都市報が報じる22日までこの一件がメディアを飾ることはなかった。解放された女性も、犯罪にかかわった可能性があるとして、刑事拘留されている。地下室から救出された後は今度は警察に監禁されたというわけだ。

情報提供者の「老刑事」は記事の第一稿を見て、「あまり過激に書かないで欲しい」と釘を刺したという。洛陽は現在、「全国文明都市」に申請しており、この大事件はマイナスに働く。少なくとも市トップの業績にプラスに働くことはない。また、あまりにも残酷な事件なために詳細が明らかになればパニックを引き起こす可能性もあるかもしれないと洛陽市政府は懸念しているという。


■身を守るための「べた」な方法

「謎の男」(職業証を見せることはなかったが市政府職員だと判明したと紀記者は述べている)の来訪から紀記者を救ったのはマイクロブログだったという。同氏はマイクロブログに「身を守るためのべたな方法を使った。マイクロブログだ」と書いている。身を守るためには人々の注目を集め大事件とし、闇の中で葬り去られないようにするしかない。

紀記者のつぶやきは1万回以上も転載され、多くの人々の注目を集めた。また、動いていたのはあくまで洛陽市当局だったため、他地域のメディアも事件を大きく報じた。紀記者のつぶやきが削除されることもなかった。騒ぎが拡大した後、「謎の男」たちの態度も軟化。「国家機密」を盾に脅すこともなかったという。


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