中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年09月24日
■陳一白の指摘
『福爾摩斯被窃醜聞』
『国内1のホームズ研究家』と称する劉臻が『ホームズ全集』に付けた2000余りの注釈のほとんどはレスリー・S・クリンガーの『The New Annotared Sherlock Holmes』からの盗用であり、全くの詐欺と言っても差し支えない。
(中略)全9巻の『ホームズ全集・図解本』は沈丁華、秦白桜、興仲華らを翻訳者に置き、劉臻が注釈者となっている。出版社によるとこの全集は「最も権威ある翻訳本 で……最も正確かつ流暢な翻訳」だという。劉氏は「国内随一のホームズ研究家」を名乗り、「2000余りの注釈は……ホームズの一切の謎を余すところ無く 解読している」とまで豪語している。
このキャッチコピーを読むと580元(約7000円)という定価も納得だ。とりわけこの「2000余りの注釈」という言葉には、国内で 出回っているその他の版本が色褪せてしまうだろう。
(中略)中国国内の歴史を振り返ってみよう。李欧梵の考証によれば、中国初のホームズ本は1896年に『英包探勘盗秘約案』(注:中国古代の名裁判官「包公」の英国版として「英包」と名付けたものと推測される)。梁啓超が刊行する『時務報』で3期に渡って連載された。
だが、今日までホームズ研究ブームというものは起こっていない。新星出版社のキャッチコピーが事実だとしても、劉臻氏は「国内随一のホームズ研究家」と呼ぶのはふさわしくないだろう。厳密に言えば、我が国にはこれまで「ホームズ研究家」など存在していないからだ。ただ、道を切り開こうとする手法には敬意を抱かざるを得ない。
だが、実際に『ホームズ全集』を手にとった後、、尊敬の念は軽蔑へと変 わった。ほとんどの注釈がレスリー・S・クリンガーの『The New Annotared Sherlock Holmes』からの盗用だったのだ。すべての盗作を指摘することはできないので、「ボヘミアの醜聞」を例にして、盗作問題がいかに深刻であるかを説明しよう。(後略)
もしこの注釈文が自分で書いたものであるのならば、ここで取り上げている100年以上前 の資料の数々をどうやって見たのか、まさかイギリスやアメリカにまで行ったとでも言うのか?
「ボヘミアの醜聞」に登場するランガムホテルは1865年6月10日にオープンしている。だがクリンガーはなぜか1863年6月12日オープンと誤った日付を記載している。劉臻も同様の間違いを犯しているが、彼はランガムホテルの公式サイトを見なかったのか?
中国国際出版集団の一角を担い、海外書籍を数多く翻訳出版している 新星出版社が、大胆にもレスリー・S・クリンガーとアメリカノートン出版社(原文は美国諾頓出版公司)の著作権を大胆にも侵害した。
こんなことをして、今後は版権代理団体とどう付き合っていくつもりなのか。この件を知ったクリン ガー氏はおそらく訴訟を検討するだろうが、それにどう対応するのだろう。