中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年09月24日
■「調和」があふれかえる中国社会
「調和」、すなわち中国語の「和諧」とは胡錦濤政権の政治スローガン。「調和社会を目指し……」といった形で、演説で繰り返されるフレーズとなっている。中国の高速列車「CRH」シリーズには「和諧号」という名前が採用されているので、ご存知の方も多いのではないか。
ネット民の間では、「和諧」と似た発音の「河蟹」という単語が「ネット検閲で削除される」、あるいは「政府権力によって消される」という意味の隠語になっていたりもする。その胡錦濤ワードである「和諧」を使って、村民に通報させないシステム「調和賞」(和諧賞)を作るとはなんとも面白い皮肉だ。まさに権力によって通報を「河蟹」(消して)いるとも言えるからだ。
■問題は「調和賞」だけか?
新京報の取材に答えた村の書記(トップ)は、「制度導入前には村民全員から同意のサインを得た」「村民の防犯意識を高めるのが目的だった」と言い訳しているが、実際には通報を減らして、「村の治安がこんなによくなりました」という業績作りをするのが目的だったのだろう。警察に通報したとしても、盗まれたものが帰ってくるとは限らない。それだったら黙って15件もらったほうが得だという判断だ。「調和賞」導入前には月50件ほどあった通報が、10件弱にまで減ったという。
村トップの言い訳は誰にも信じてもらえなかったようで、中国メディアは「調和賞」批判の記事を相次いで掲載している。官制メディアの新華網まで「村の調和賞で本当の問題を隠すことなかれ」という論説記事を発表した。とはいえ、中国的「調和」の欺瞞を言い始めると、いろんなところに飛び火してしまうようにも思えるが……。