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村民にお金をあげるだけで治安がどんどんよくなる魔法の制度「調和賞」がひどい―北京市

2011年09月24日

北京市順義区后沙峪鎮后にある沙峪村。この村には「調和賞」という不思議な名前の制度がある。村民は何もしなくとも月15元(約180円)のお金がもらえるのだ。

そんなうまい話はないと思うかもしれない。もちろんそのとおり。「やらなければいけない義務」はないが、「やってはいけないこと」がある。泥棒に物を盗まれようが強盗に押し入られようが、警察に通報してはならないという決まりがある。もし通報すれば、その月の「調和賞」はもらえなくなくなってしまう。泥棒に入られた村民が「通報したらお金がもらえないのは不公平」と訴え、発覚した。2011年9月23日、京華時報が伝えた。


两个大闸蟹 / fzhenghu



■「調和」があふれかえる中国社会

「調和」、すなわち中国語の「和諧」とは胡錦濤政権の政治スローガン。「調和社会を目指し……」といった形で、演説で繰り返されるフレーズとなっている。中国の高速列車「CRH」シリーズには「和諧号」という名前が採用されているので、ご存知の方も多いのではないか。

ネット民の間では、「和諧」と似た発音の「河蟹」という単語が「ネット検閲で削除される」、あるいは「政府権力によって消される」という意味の隠語になっていたりもする。その胡錦濤ワードである「和諧」を使って、村民に通報させないシステム「調和賞」(和諧賞)を作るとはなんとも面白い皮肉だ。まさに権力によって通報を「河蟹」(消して)いるとも言えるからだ。


■問題は「調和賞」だけか?

新京報の取材に答えた村の書記(トップ)は、「制度導入前には村民全員から同意のサインを得た」「村民の防犯意識を高めるのが目的だった」と言い訳しているが、実際には通報を減らして、「村の治安がこんなによくなりました」という業績作りをするのが目的だったのだろう。警察に通報したとしても、盗まれたものが帰ってくるとは限らない。それだったら黙って15件もらったほうが得だという判断だ。「調和賞」導入前には月50件ほどあった通報が、10件弱にまで減ったという。

村トップの言い訳は誰にも信じてもらえなかったようで、中国メディアは「調和賞」批判の記事を相次いで掲載している。官制メディアの新華網まで「村の調和賞で本当の問題を隠すことなかれ」という論説記事を発表した。とはいえ、中国的「調和」の欺瞞を言い始めると、いろんなところに飛び火してしまうようにも思えるが……。



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