中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年09月26日
■おからよりもろい「粉末レンガ」
「おからのほうがよっぽど頑丈ですよ……」と嘆くのは、河南省鄭州市の「匯景嘉園」の撤去作業責任者。「匯景嘉園」は住宅取り壊し対象者の移転先として建設されたが、完成からわずか2カ月で品質問題が発覚、取り壊しが決まった。
問題となったのは「粉末レンガ」だ。中国ではどんな建物でもレンガがよく使われている。日本の建物と変わらないような外見をしていても、塗り壁の下にはレンガが詰まっていることがほとんどだ。建設ラッシュが続く中、大量のレンガが必要とされているが、低品質のレンガが出回っているほど。手でつかむとぱらぱらと粉末がこぼれ落ちてくるほどで、耐震性を問うどころの話しではない。「匯景嘉園」では壁面の90%以上に亀裂が走っている。
この粉末レンガは、いわゆるぼた、石炭採掘時に出てくるクズ鉱石を焼き固めたものだという。河南省のみならず、広西チワン族自治区、湖北省、河南省など各地で確認されている。クズ鉱石を使ったものだけではなく、頁岩を使ったものなどさまざまなバリエーションがあるようだ。
中国レンガ業界には8万社もの会社がひしめいているが、年5000万個以上を生産する大企業は全体のわずか5%。1000万個以下の中小企業が40%を占めており、その数の多さに当局も十分な管理ができない状態だという。
■問題物件は低・中所得者向けに集中
インフレ対策、住宅価格高騰対策に力を入れる中国政府は、低・中所得者向けの保障性住宅を今年10月までに1000万戸着工するとの大目標を発表した。もうからない仕事だけに当初の動きは鈍かったが、各地方の官僚の業績に響くとあって、目標は達成されそうな勢いだ。
(関連記事:低・中所得者向け公共住宅1000万戸着工=政府目標に黄信号―翻訳者のつぶやき)
しかし1000万戸という数はそろったとしても、その品質まで基準通りかというと話は別。もうからない仕事だけに、よろしからぬ方法で利益をあげようとの動きが広がっているようだ。おから工程、ダイエット鉄筋、粉末レンガなどの問題も多くは保障性住宅に集中している。
「民に優しい中国政府」をアピールするための政策がとんだやぶ蛇になった格好だ。購入する側も1000万戸着工というビッグウェーブに乗るべきか、はたまたリスクを考えて避けるべきか、悩ましい決断を迫られそうだ。