■中国様がウィキリークスにキレる■
世界各国に点在する米国領事館員が現地政府や国内事情をひたすら本国に送信しまくっていた米外交公電。流出した25万件もの公電をすべてウィキリークスが公開したことで、大変な騒ぎとなっています(ウィキペディア「
アメリカ外交公電ウィキリークス流出事件」)。
中国も被害に遭った国の一つ。まじめなネタもありますが、
・中国でのグーグル閉鎖は、自分の名前でググッたら悪口だらけだった李長春が命じた
・胡錦濤がCCTV(中国中央テレビ)の女子アナと不倫していた
といった女性自身みたいなゴシップネタまでずらり。日刊ゲンダイみたいなネタを領事館員が真顔で暗号化して本国に送信している姿を想像すると胸が熱くなります。
さて、中国外交部の香港出先機関である駐香港特派員公署がウィキリークスに抗議しています。ゴシップネタに対して、ではありませんが。

*陳日君、李柱銘、黎智英(左から)。*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。
■駐香港特派員公署の抗議声明
『外交公署、米領事館の政治干渉に不満』
記者「香港の政治、経済、社会などの分野に関する、数千件の駐香港米国総領事館公電をウィキリークスが公表している。意見を聞かせて欲しい」
報道官「この問題をを注視している。公電からは米総領事館員が香港の政治制度、社会発展問題に興味を抱いていたことがわかる。また、香港政治制度の発展問題について、米国は干渉するような意見を香港特別区政府にしていただけでなく、特定の人間と頻繁に会って意見を交換し
ている。米国側の行為は『外交関係に関するウィーン条約』などの国際法が規定する職能を超えている。我々はこれらの行為に不満を表明し、米国側にこの種の謝ったやり方を止めるよう要求している」
超の付く親中紙が、脳内記者と報道官のやり取りを独占取材。
文匯報は誰とは明言していませんが、記事に何故か張られている写真から判断するに、領事館員が「頻繁に会っていた人物」とは、返還前の香港でナンバー2をつとめ、市民人気も高く行政長官就任を求める声まであった陳方安生、民主党初代党首の李柱銘、香港のカトリッ
ク教会枢機卿である陳日君、そして香港紙・アップルデイリーの黎智英代表といった面々。いずれも北京政府とは政治的に距離が遠い面々ばかりです。
在香港米国総領事館公電の1000件のうち、過半数が民主党派に関するもの。上記4人の動向や意見に関するものだけでも100件を超えているといいます。政変の裏に外国勢力、特にアメリカの陰謀説が大好きな中国は「反対派を操る事で、香港全体の政局を操ろうとしている」と文匯報に批判させています。
政治、経済、文化的手段を使って平和的に政治体勢を変えようとする「和平演変」を中国政府は非常に嫌っています。外国からの指摘を内政干渉と批判するのもこの考えが念頭にあるからです。
■中国当局の怒りとメディアの批判
中国当局の怒りは収まらないのか、さらにメディアを使った批判を続けています。
外部勢力の香港政治干渉を許さない(香港文匯報、2011年9月27日)香港世論が米国を厳しく叱責(人民日報、2011年9月27日)文匯報に再度批判させただけでは足りないのか、香港親中紙(文匯報、大公報、商報)の社説を人民日報に転載してまで批判を展開。
これまでウィキリークスが公表した内容がそれなりに事実に迫っていたから、これほど必死になっているのでしょうか。まあ、香港だけではなく中国本土でも同じようにやられてはかなわん、という危機感があるのでしょう。
文匯報は9月6日から米国批判シリーズを続けていますが、その中で「カラー革命の経験を香港に持ち込もうとした」と指摘しています。中東政変の波及が中国政府の何より恐れるところ。半ば釣りだった中国ジャスミン革命に対しても、最大限に警戒していました。
「ウィキリークス情報なんか全部ガセネタ!ゴシップ誌と一緒!」と無視してもいいはずだったのに、この過敏な反応。「アラブの春」の広がりを目の当たりにした李長春あたりが本気でビビっているのかもしれません。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。