中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年10月02日
■クーポン化とグルーポン系サイト
生きた蟹を売る商売からクーポン(業界では「紙蟹」というらしい)を売る商売に変わることで何が起きたのか。蟹を贈答品として送ることができるようになったのだ。死んだ蟹を食べるとヒスタミン中毒にかかる可能性があるため、鮮度がきわめて重要、贈答品には難しい。だがクーポンだけ受け取って、もらったほうが好きなタイミングで引き替えできるとあれば問題はなくなる。上海ガニは中秋節前後に解禁となることが多く、目新しい中秋節ギフトとして一気に人気を集めることとなった。
また、蟹券普及の原動力となったのがグルーポン系サイトだ。期間限定で大幅に割引きされた商品を販売するグルーポン系サイトと蟹券の相性は抜群だった。最初から値引き前提で元の価格を思いっきり釣り上げておき、それを大幅に値引きして販売する。贈答品なので蟹券に書かれている価格は高ければ高いほど、買う側にとっても都合がいいという寸法だ。
お茶や紹興酒とセットにして、豪華な箱に詰めた貴賓蟹券、至尊蟹券などゴージャス版も次々登場。蟹券は贈答品商戦に一席を占める存在へとのしあがった。
■計画倒産と産地偽装
9月になり、上海ガニが解禁になると引き替えと発送が始まる。ここにも多くの秘密が隠されているという。問題は贈答品に使われるブランド・ガニ、陽澄湖大閘蟹の量がきわめて少ないことにある。例年2000トン前後しか捕れない(別記事では3000トンとも)ため、絶対的にモノが足りない。
(関連記事:上海ガニの旬到来!ブランドガニはほとんどがニセモノ―中国)
カニ販売業者の対策は、産地偽装して別の場所のカニを売る、クーポンだけ売って出荷シーズンになると夜逃げといったものがあるという。また、蟹券には「250グラムのオスと200グラムのメス」といった具合に大きさまで指定してあるが、一回り小さいカニを送りつけるケースも少なくないという。50グラム違うだけで値段は数倍の差がある。受け取り主もどうせタダで受け取ったもらいもの。クレームが来ることはほとんどない。
■魔法のように儲かる蟹券マジック
さて、蟹券ビジネスで一番面白いポイントは、蟹券換金、売買のエコシステムが構築されている点にある。もともと中国では酒、タバコの贈答品が好まれるが、それは高額でかつ劣化しにくく売買しやすいという特長による。街中にはいたるところに「酒、タバコ回収」という看板をかけている店を見ることができる。そこに贈答品を持ち込めば換金できるという仕組みだ。
生きたカニはさすがに換金することはできないが、クーポンならば劣化せずに売買が可能だ。というわけで今や北京だけでも2000店以上の蟹券売買業者が存在するという。この時点ですでに相当面白い展開だが、さらに感心させられたのが蟹券発行業者自身が自分で発行した蟹券を買うという展開もあるのだとか。
例えば企業が1000円で蟹券を購入、社員にギフトとして配る。社員は蟹券回収業者に800円で売りつける。最後に発行企業が回収業者から900円でその券を買ったとすると、一切カニを発送することなしに100円の利益が得られるのだ。
一人の人間がこのシステムすべてを考え出したのか、それとも次第次第に形成されていった慣行なのかまではわからないが、よくできた仕組みだ。ちなみに蟹券同様のシステムを形成している月餅券もあるという。そのうちありとあらゆるものがクーポン化され、贈答経済に組み込まれていくのかもしれない。
人件費とか送料を考えたら得なのか・・・
でも、カニを500円とかで仕入れてたら、権を900円で買い取らずに500円の利益を取る気がする、引き換えないケースもあるだろうし。