中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年10月05日
■人の住まない場所にレジャー施設?
説明によると、2億ドル(約153億円)の資金のうち、800万ドル(約6億1300万円)は土地購入に利用。プロジェクトが承認された後、今度は約1億ドル(約76億7000万円)を投じて2万平方メートル前後のレジャー施設を建設する計画です。
レジャー施設にはゴルフ場、競馬場、アスレチック施設が建設される予定だそうですが、しかし場所はアイスランド北東部の、人がほとんど住んでいない地域です。この莫大な投資が本当に回収できるかは未知数でしょう。ただ、同氏はアイスランドを足がかりとして、デンマークやノルウェーなどに手を広げていくとしており、今回の計画に自信満々のようです。
■土地は全国土の0.3%にも=中国政府の関与を疑う海外メディア
アイスランドで300平方キロメートルというと、全国土の0.3%に当たります。ここのところ海外での中国企業の土地購入は日本を含めて何件かありましたが、これほどまでの規模は極めて珍しく、海外メディアが騒ぐのも当然と言えます。
アイスランドと中国とは遠く離れているといえ、中国にとっては欧州を臨む安全保障上の要地となります。欧米メディアには「企業の土地購入は名目で、本当は中国政府が戦略的拠点にしようとしているのではないか」と推測する向きもあります。
こうした懸念の背景には、アイスランドという戦略的重要性に加え、黄董事長のバックグラウンドにもあります。
■黄怒波の政治的バックグラウンド
黄怒波董事長は1956年蘭州生まれ。2歳の時に父親が文革で反革命分子のレッテルを貼られ、悲観のあまり自殺。家族と共に寧夏回族自治区に移り住みますが、13歳で母親をなくします。「黒五類」の汚名をそぐために「黄会計」と改名して共産党に入党。
文革終結後の1977年に北京大学に合格。卒業後、1981年から中国共産党の宣伝機関である「中央宣伝部」に10年間、勤務しました。退職後、1995年に中坤集団を設立。政治的バックグラウンドが非常に濃い人物だといえるでしょう。欧米メディアが懸念するのも理解できます。
黄董事長は8月31日、北京晨報の取材に応じ、「この投資に政治的なレッテルを貼られるとは思っても見なかった。ごく普通の海外投資だ」と説明するとともに、「中坤集団の投資に対するいわれのない邪推、歪曲である」と強調しました。
■アイスランド側は慎重に考慮
アイスランドでの土地買収については、中国国内では審査・承認の手続きが始まっているほか、アイスランド側も審査を始めています。ただ、アイスランド内相は同氏が購入する土地が大きすぎるため、慎重に考慮するよう政府に要求しています。
こうみていくと……またしてもバブル期の日本企業の経営者とかぶってしまうのです・・。あのとき鼻息荒く海外に次々と投資した日本企業の経営者はバブル崩壊後、ことごとく落ちぶれていきました。 中国バブル崩壊の兆しが見え隠れする今、同氏があえて北欧に投資する意味はあるのでしょうか。同氏が抱く投資戦略の影に政治的意図が本当に隠されていないのか、そしてそのことを立証できるのかどうか。注意深く見守っていく必要があるでしょう。
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「日本の森林が中国人に買われていく」?!ええ話じゃないですか、ばんばん売ったれ―「クローズアップ現代」(2010年9月8日)
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。