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2011年10月07日
停電当時、1016号列車は豫園駅を出発していた。信号システム停止に気づいた運転士は指令センターに指示を仰いだが、手動減速方式で運行を続けよとの命じられている。老西門駅にたどりつく前に赤信号があり、1016号は停車し、待機していた。
10号線指令センターは午後2時1分、運行中の列車の位置をすべて調べるよう指示。ところがその7分後、位置の把握が終わっていないのに、電話閉塞方式導入を指令した。これは路線を複数の区間に分け、前方の区間に列車がないことを確認した後に、電話で発車ゴーサインを下す方式だ。この方式が厳格に運用されていれば、豫園駅・老西門駅間に1016号が停車している以上、後続列車が進入し衝突することはなかった。
午後2時35分、1016号の存在をすっかり忘れた指令センターが1005号に豫園駅発車のGoサインを下す。現場担当者も同意し、1005号列車は発車した。制御システムがない状況にもかかわらず、時速54キロのスピードで快調に走行。そして前方に停車している1016号を発見した時にはもう遅い。ブレーキをかけたが間に合わず時速35キロのペースで衝突した。
■事故原因
調査グループは、「指令センターが故障区間内を運行中だったすべての列車の位置情報を確定する前に、電話閉塞方式での運行を許可したこと」「電話閉塞方式を指示された現場担当者が前方区間に停車車両があるかどうか確認せずに発車を許可したこと」が原因だったと断定した。
10号線指令センター指令長、センター副経理をはじめ、電力工事企業関係者、老西門駅担当者など計12人に解任や職位変更、戒告などの処分を下した。
事故後、信号システムを供給していたカスコ信号社の責任を問う声が高まっていた。温州高速鉄道追突事故現場にも同社製品が使われていたことから、品質に根本的な欠陥を問う声があるのではと疑われたためだ。カスコ信号社は「停電したのはうちの責任じゃない」と真っ向反論していたが、調査報告書もその主張を認めている。
しかしまあ絵に描いたような「人為的ミス」である。多分、大丈夫という思い込みで運行を再開させたことが大事故となった。7月23日の温州高速鉄道追突事故も、同じく信号システム故障下での運行が事故を招いたのだが、なぜ故障時に運行中止にできなかったのかが最大の問題ではないだろうか。責任者の出世に響くからか、乗客の暴動が怖いからか、はたまた「たぶん大丈夫だよ、根拠ないけど」という精神性の発露なのか。同様の事故を連続させた社会的な背景も気になるところだ。